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ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル(サザンシアター 7/22 14:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

アメリカのコカイン中毒の話です。
といっても暗くはなくて、救いがある。

イラク戦争で足を負傷し、
アラブ人の幻影に悩まされている男子学生と、
そのいとこで、夫と離婚しようとしている音楽講師。
男子学生の育ての親が、長年寝たきりで、いよいよ死にそうになっているらしい。

一方で、全く別のストーリーとして、
あだなで呼び合う人たちの場面。
舞台上にいくつか低くなってる部分があって、そこから会話しあってる。
(というか、高い部分が橋のような感じ)
あ、これ、ハンドルネームで、
つまり、ネットのチャットルーム(掲示板?)での交流なんだな、とわかる。
篠井英介さん演じる女性はチャットルームの管理人で、
中毒から脱して何年も経過してる人。
みんなを優しく見守り、穏当に運用している。

この二つがどう関係あるのか? と思っていたら、1幕終わりで、
篠井さんが、いよいよ死にそうになっている女性と、姉妹であることが判明。

2幕からはどんどん話が動き出す。

穏やかだった管理人さんは、じつは、男子学生の実のお母さんで、
ネグレクトして、もう一人いた娘を死なせてしまったんだんって!

そのとき、娘にあげなければいけなかったのが、
スプーン一杯の水だったのだそうだ。
それを放棄して逃げちゃったの。

そして、妹の死と、それらを責める息子(男子学生)に直面して、
またコカインをやってしまい、オーバードーズ。

というのが大筋なんだけども、
そこに、チャットルームにいるおじさんと、若い女性の恋物語や、
セレブぶってる高飛車な、でも救いを求めてチャットルームにやってきた男性の物語などが、
上手に絡んでいって、上手い。

特にうなったのが、
死んだ女性(男性学生の育ての親)のお葬式で、
彼女の功績を讃える台詞が語られている、
その横で、死の淵にいる管理人さんが、
スプーンで一杯ずつ水を誰かにあげる仕草をずっとしているの。

コカイン中毒で、娘を殺してしまったけど、
チャットルームの管理人として、たくさんの人を救ってきた、
彼女の知られざる「功績」が、そこで、讃えられているように見えて、泣けた。
でもやっぱり弱いから、またやってしまったんだよね。

かように、水が重要なモチーフで、
チャットルームにいるおじさんの経験談で、津波に襲われたことと、
そこから救助されたときの感覚が、
中毒から足を洗えそうになっている感覚と二重写しに語られたり。

オーバードーズから助かって、でもリハビリが必要な管理人さんが、
バスタブで体を洗ってもらっていたり。

ところで、男子学生がおそわれている幻影のアラブ人は、
イラク戦争ではじめて自分が殺したアラブ人なのだそうだ。
かように、2010年頃?のアメリカのリアルな感じが伝わってくる。
(ちなみに、管理人さんが使っていて、「石器時代かよ」って言われてたPCは、
ブルーグリーンの透明のi-Mac。私も持ってた! 1998年に買ったよ!)

重要な台詞がバンバン出てくるんだけど、
情報量が多くてちょっとおいていかれそうになるときもあった。
あと、いかにもアメリカンな会話(急に冗談や怒りで突っ込んでいくような)に
ついていけないことももちろん。

でもすごくよくできた芝居だった。
G2が是非やりたかったというのも納得。
みんな弱くて傷を持ってるけど、支え合うことができるんじゃないか、
そう思わせてくれた。

男子学生役の右近さんは頑張っていたけど、ちょっと力が入りすぎ。
いとこの南沢奈央は、カントリーでもそうだったけど、激昂したときの台詞が滑ってしまう。
セレブ男の葛山信吾は宝塚BOYS初演のときは下手だと思ってたけど、
今はいい役者になったなあ。
チャットルームにいるおじさんは鈴木壮麻さん。情けないおじさん役も素敵。
相手役の村川絵梨ははじめて見た。いかにもアメリカ人ぽい台詞が上手い。
陰山泰さんが、アラブ人の幽霊だけってのはちょっともったいなかった。


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