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その後見たものまとめて。2021年12月 [観劇メモ]

●KAATで「アルトゥロ・ウイの興隆」

ヒトラーをギャングに置き換えた、ブレヒトの1941年の作品を、
現代に、ファンクミュージックでノリノリにして上演する、という白井晃演出。

ヒトラー、ギャング、音楽の時代、と3つの層があるので、
最初ちょっとついていけるか不安だったけど、大丈夫だった。

ノリノリの音楽で、最後、「ヒトラー(に相当する役)に賛成の人~~!」
って聞かれて、ハイルヒトラーを客席がやらされる、
これがマジ怖い。
やらない人が当然いるので、そうすると、銃声が飛ぶんですよ。
3階席だったので、手をあげなかったけど、
あげる人はどういう意識だったんだろう。ノリなんだろうか。
まさか本気で賛成しているわけではあるまい。

手拍子も、しないと悪いかな、みたいに思ってしまう。
でもそれって、「同調圧力」そのもので、
ヒトラーに賛成してなくても、場の雰囲気で、手あげちゃう、手拍子しちゃう、
っていう心理を、上手くついている。

にしても、ヒトラーのやってることって、ほんとギャングなんですね。
脅迫、言いがかり、罪のなすりつけ…

でも、銃殺こそしてないけど、今の日本だって、
警察、司法、マスコミを完全に支配してて、
わいろ送りまくっても罪に問われなくて、
方向性としては、これと同じだよね?

最初と最後に、これは遠い国のお話ではないんですよ、と繰り返される。
これが上演できる日本はまだマシなんだろう。

なお、ヒトラーに相当する役の草彅剛、
マイケル・ジャクソンみたいなダンスが上手くて、ずっとその調子で歩いてて、
セリフはそう上手いわけではないから、イキってる変な人にしか見えない。
なのになのに、センターに立つことにまったくてらいがない(さすがアイドル)。
その、センターにいるのに何もない、空洞な感じが、
いかにもダメで支配欲しかない権力者という感じで、
底知れぬ恐怖を感じる。


●星組「柳生忍法帖/モアー・ダンディズム!」

長い原作を縮めた難があって、え!? という部分はあった。

でも、全体として、すごく良かったなあ~~。

なんといっても、虐げられた女性への目線がすごく優しい!
それを少女歌劇でやるのって、ほんと正しい!
大野拓史、万歳!!

敵方の男たちに家族を殺された女性たちが、
団結してかたき討ちをする。
それを指導する伝説の剣士。

男に利用された女性が、
はじめて自発的に好きになる、
それが伝説の剣士。

「女たちを殺さなければならないんだったら、
徳川家なんてつぶれて結構!」

「公」より「私」が大事。
なんて素晴らしいヒーロー…!

それをやる礼真琴さんが、上手くてねえ。
ほんと、実力に裏打ちされた余裕があって。
粗野な仕草、粗野な台詞、でも心根は優しく、お父さんには弱い、
それを全部、きちんとした技術でやってるんですよ。
ノリとか持ち味とかじゃなく。
なんとありがたい。

かつてのディープなヅカファン時代だったら、
原作読んで比較して10回ぐらいリピートして、
さんざん語るところだな。
キャラ一人ひとりについても深めたい。

白妙さん、大輝さんがすっかり重鎮になってて、
みっきーが準主役っぽいし、
かわいい娘役さんがいると思ったら、はるこちゃんだった(笑)
そういうところも楽しい。

ショーは懐かしい岡田敬二作品。
昔は「かったるい」と思っていたけど、ここまでくるとむしろ懐かしくて心地よい。

ところで、衰退していたと思ってた「キザり」がちょっとある?
突然雄たけびあげたり、すごいタメる部分があったり。
これは、星組だから? 昔の作品だから?

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その後観たものまとめて。2021年11月 [観劇メモ(ヅカ以外)]

●阿佐ヶ谷スパイダース「老いと建築」

30代頃抱いていた希望が、
あれ? そんなつもりじゃなかったのに……
というのは、よくわかる。
ましてや70にもなると、体も動かないし、記憶もあやふや。
人生、全然違ったよね……となる。

それを家の建物を中心にして表現するという。
もう2階に上れないとか、暖炉を使わなくなったとか。
切ない!

時制が行ったり来たりして、場所も錯綜する。
演劇でしかできない表現。

村岡希美さんは顔も声も好きで、
「マダム・メルヴィル」(成宮くんと石田ゆり子が主演!)以来、
ちょこちょこ観ているけど、老婆役も本当に良い。
これから本当に老婆になっていったら、どんな演技を見せてくれるだろうと楽しみ。

●二兎社「鴎外の怪談」

劇チョコの「一九一一」観た人はぜひ、とツイートされてて、
それなら、とチケットを取った。
同じく大逆事件を扱った作品。
鴎外が、弁護側にも、体制側にも関わっていたとは、知らなかった!

今もまさに起きていることなんだよね。
非人道的なことが、
「次から直せばいいじゃん」「これを機会に〇〇協会を立ち上げればいいじゃん」
と言いくるめられていく。
現場にいる人は、抵抗しようとするが、だんだんと絡め取られてしまう。

高校の教科書に『舞姫』が載っててて、
女子は全員「鴎外サイテー」と思ってたと思う。
だからろくに作品を読んだこともなかったよ、ごめんよ、鴎外。

明治の価値観の姑と、
若くて小説も書いちゃう嫁。
遊び人だけど体制に批判的な後輩、永井荷風。
大逆事件の弁護を担当する熱血漢の後輩、平出修(一九一一にも登場!)。
軍医として出世したけど、常に葛藤している鴎外。
体制におもねるのがデフォルトの友人(舞姫の相沢のモデルだとか)。

そして、庶民を代表するような女中。

葛藤してるけど、体制から抜け出すほどの勇気はない、
エリスのことが好きだけど、駆け落ちするほどの勇気はない。
あるよね、そういうこと。
松尾貴史が、体格が良くて威厳があって、
でもいざというときすごーーく弱い鴎外をやってて、
そしてちょっと色気もある?

ただ、一九一一は下っ端役人だったからもろに感情移入できたけど、
軍医はすごいエライさんだからなあ、
そこまでは感情移入できなかったかな。

でも、妻の目を通して、
愛すべき人として見ることができるのが上手い。
あと、最後ちょっとした救いもあるのもありがたい。

荷風役が味方良介で、Take Me Outの映像でしか見たことなかったが、
あのちょっと早口な感じもいいね。
この荷風が、年とって、空襲で家焼け出されて、
戦後はストリップ小屋に入り浸りか~、と容易に想像できた。

●「ハウトゥーサクシード」

咲良さんがアンサンブルで出ているので観ました。
バリバリ踊ってて、アメリカンな雰囲気に合ってる!

作品は、古臭いのもここまでくると古典だなあ、と。
むしろ、日本が変わったから(もしくはアメリカ人の演出家が演出したからか)
これってむちゃくちゃ皮肉なんだ、とうっすら理解できたかも。

それか、宝塚ではないからなのかも。宝塚は精神的美徳を求めちゃうから。
主役のジャニーズの人がある意味すごく上手くて、
表面的にふるまうっていうのが成立してた。

雛形あきこが下手だし貧相だし、で、
セクシー美女に翻弄されるという部分は、成立していなかった。
もっとセクシーな人いるでしょう。
(ストリップ見てるからそう思ってしまうのか??)

オサさんが出てるのは感慨深い。新人公演主演だもんね。

役員洗面所の場面は本当に素敵。
黒須洋嗣さん、イケオジなうえにダンスも上手い。あ、もともとダンサーなのか。

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その後観たものまとめて。2021年8月~10月 [観劇メモ(ヅカ以外)]

●KAAT 花組「銀ちゃんの恋」

マイティの銀ちゃん、いいなあ~。
この役、ニンじゃないと思われてる人が、えいやってやるからこそ、
架空のスターとして成立するんだよね。

つかさっちのヤス、今までで一番バランスがよく歌も上手い。
何より、元インテリっぽさがある。
小夏も、今までで一番やさぐれてる(笑)。

いろいろ改変されてるらしいが、
撮影で人が死んでもいいっていう価値観は、今は、ちょっと「無い」なあ。

じゃあ、すごく昔の話ですよってことにすればいい。
けど、なんかちぐはぐで、
ローラースケートしてたり、ブランドの袋持ってたり、
なのにウエストサイドストーリー踊ってたり、
一体、何年設定なの??

と思いつつも、やっぱり、すごい作品だなと思う。
こういう変な人たち、あまりにも特殊。普通はいない。
でも、こういう心情って普遍なんだよね。
この異常な三角関係も、支配欲も、依存心も。

●赤坂レッドシアター「楽屋」

清水邦夫の有名な作品でずっと観たかった。
ゆうひさんが出るので観たけど、へー、こういう話なのね。

女優さんが、「かもめ」のニーナ役をめぐって、争ったりしている。
そのうち何人かはすでにあの世のもので、
妄執で楽屋をさまよっているのだ。
「女優」の執念とは。

現代だと、「女優」に特別な意味を持たせすぎだと感じてしまう。
男優にして上演してみたらどうよ?

笠松はるの熱量がすごかった、
オギーの「カリソメのカタビラ」でマリー・アントワネットやった人だ。

●配信で「砂の女」

砂にうずもれる家のセットがキモなんだけど、
配信なので、暗くていまいち見えなくて、入り込めなかった…。
多分、生で見たらすごい良かったと思う。
とはいえ、オリンピック後の感染拡大期間だったので、
配信をしてくれてとてもうれしかった。

●あやめ十八番という劇団の「百夜車」

「Take Me Out」の音楽を担当した吉田能がやっている劇団とのことで、
はじめて観てみた。

すごい密度のミュージカル。
こんなん作ってる人たちがいるんだー。

能とか和歌とか、古典をふまえて、
現代に置き換えて、例の、さえない女性が次々男性を殺したという事件が題材。

そもそもの原因(トラウマ)や、男性が死んだ理由がそれ!? 
っていうのもちょっと意外で面白い。

ただ、詰め込み過ぎで誰が主人公かわからなくなっている。
いろんな話が錯綜するのはすごく有機的でいいけど、
メインの二人が後退してしまっていた。

あと、歌詞が聞こえないーー。音の数が多すぎるのでは。

でもまた観てみたいです。


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