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BLUE RAIN(博品館劇場 7/3 19:00) [観劇メモ]

コロナ後、ミュージカルとしては最初の公演らしい。
再発売で運良く買えたので、ドキドキしながら劇場へ。
じつに4か月半ぶりの観劇!
チケットやオペラグラスを忘れずに鞄に入れて、
時間を気にしながら劇場に行くのも、久々すぎてムズムズする。

席番によって、できれば●分前に来てください、とHPにあったけど、間に合わず。
でも、席数を半分に減らしたせいか、
あの、いつも超混雑のエレベーターも、全く混んでおらず。
チケットは、提示したあと自分でもぎって箱に入れる。
手にアルコールスプレーをぷしゅっとされる。
休憩無し。トイレ使えない。
物販無し(本来パンフだけは売る予定だったが間に合わなかったらしい)。

席は1つずつあけて座るんだけど、お隣との間に、ビニールシートが!
即席でよく作ったなあ。
舞台を観るのには邪魔にならない程度。

舞台にもビニールシートがたくさん。きれいではある。

はじまった!
…あ、あれ? 私、冒頭の台詞聞き逃してる。
何年何月何日って言った…?

なんと、久々すぎて、舞台を観る集中力が戻ってこない!
そうだった、舞台を観るって、
台詞を聞き逃さないように、はじっこにいる人が何してるか、小芝居を見逃さないように、
舞台装置の意味や、照明の変化、
とにかく、全感覚をフルで使って集中しなくちゃいけないんだった!

…幸い、数分で集中力が戻って来た。よかったよかった。

舞台のまわりに椅子があって、出番のない役者さんがコーラスをする形式。
この椅子の前にビニールシート。
そして中央に、可動式の大きなビニールシート。
激しく怒鳴り合うようなシーンや、探り合うようなラブシーンは、
このシート越しに行われる。
下のほうはきれいに絵がかいてある。

拘置所の面会のアクリル壁になったりして、かなり自然。
さすがオギー演出。

とはいえ、ほんとはここでもっと近付くんだろうなあ、
コロナがなかったらこんなのつけないよなあ、
こういう、サスペンスっぽい話だから、「秘匿」の暗喩にもなるけど、
ハッピーで一体感を求めるような話だったら、使えないよなあ、
と考えたりもする。

でも、途中からビニールシートが全く、一切、気にならなくなった。
作品が、役者が、とにかく中身が濃かった。

カラマゾフの兄弟が元ネタで、韓国作品だそうだ。
カラマゾフと言えば、水さん主演のあれ。
だから犯人はわかってるんだけど、ぐいぐいひきこまれる。

「ブルーレイン」とは、親に虐待された子どもに降る雨なんだと思った。

時制が少し行ったり来たりするのもいい。
だんだん過去のことがわかってくるのもいい。

死んだ父親は、家族を虐待していたから、
兄弟はものすごく父親を憎んでいる。
その憎しみをどう扱ったらいいのか。

みんな衣装は青なのに、父親だけが赤。
でも、兄弟たちは、一か所だけ、ポケットチーフとか、
赤いものを身に着けてるの。
つまり、暴力を彼ら自身も受け継いでしまっている。
「あなた、父親にそっくりじゃない」と言われ、愕然。
父親の幻影に悩まされるのは、自分の中にある暴力性におびえているってことなんじゃないか。

歌に乗せて感情がガンガン迫って来る。
これだよこれ、ミュージカルの醍醐味だよ。

フョードルに相当する、暴力の権化のような父親、今井清隆。
一本調子な感じでちょっと苦手なんだけど、
それが、内面をおもんぱかってあげようという気も全く起こさせない、
暴力そのものに見えて、効果的。

ドミトリーに相当するテオ、不良青年だけど、
むちゃくちゃ優しいお兄ちゃんが、吉野圭吾さん。
情があるよねえ、この方。
子どものころのエピソードに泣く。

イワンに相当する頭のいい弟ルークは、東山光明…Daiamond Dogsの人なのね。
はじめて見るけど、押しが強くてすごく良い!! 
真麻里都にちょっと似てる。

スメルジャコフに相当する意味深な青年サイラスは、木内健人
これまたはじめて見るけど、意味深な笑顔といい、
高い声といい、ぴったりな配役なんじゃない? 

アリョーシャに相当するのかな? 天然ぽくて愛情にあふれた家政婦さん、
池田有希子。小柄なのに力強い。。。えっ、モーリー・ロバートソンの妻なんだ、驚き。

グルーシェニカに相当するヘイドンが、水さん。
まじめに生きようとしているのに、うまくいかない葛藤。
湿った憂いがあって、この作品にぴったり。
(ドミトリーやってるしね)

多くの人が死んでしまうけど(このあたりの台詞はコロナをふまえてなのかな?)、
舞台のはじにある水槽の二匹の魚
(舞台装置の一番奥と、水さんのストッキングにも描かれている)のように、
テオとヘイドンのように、幼いときのテオとルークのように、 
誰かがいれば、アダルトチルドレン同士、支え合って生きていけるかな。

私の心も、一緒になって親を憎み、誰かを疑い、
そして、誰かを助けようと思って、100分の物語を生きた。

役者さんが、全力で力を発揮してる。
これがこの人たちの幸せなんだと強く思う。
その、幸せに客席も共鳴する。共鳴して、同じ物語を生きる。

配信はいろいろ観たけど、
やっぱり、同じ時間にやっている、巻き戻せない配信が良かった。
同じ時間に同じ物語を生きる。共時制。

そして、同じ空間で!
それが、劇場に行くってことなんだ。

役者さんたちと、物語を生ききったあとの、爽快感。
なんて幸せなんだろう。
私達はこれを絶対に、守らねば。

今までは大勢の同士と共に降りていた階段を、
(退場も列ごとに少しずつだったので)
たった一人で泣きながら降りた。
嬉し泣きだ。

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ネリ

博品館劇場は、レトロな今のうちになるべく行って、記憶にとどめておきたいです。ビル自体がそろそろ危ない感じ。。

BLUE RAINは観たいと思っていたのですが、タイミングがあわず。相当工夫されて上演されていたみたいですね。
原作や、俳優さんたちのこれまでの出演歴や関係性など、ひとつの舞台に隠れた背景がいろいろと分厚くあって、それを観客が感じ取れることが、生の舞台を観るだいご味だなあ、と改めて感じます。
(有料無料とも舞台関係の配信を見ましたが、やっぱり劇場に行かないとダメです。お話に入り込めない。。)
by ネリ (2020-07-10 11:46) 

竜眼

この時期にコメントくださっていて本当にありがとうございます。
今(2021年春)だと、PCR検査で陰性の人しか舞台上にいないからいいよね、ってことで、舞台上に透明な幕とか置いてないですが、このときは民間の検査もなかったから、こうしてたんですよね。貴重な体験でした。
博品館のレトロな雰囲気も、悲壮感(芝居の中身も、コロナの状況も)を増幅させてたかもしれません。
今また緊急事態宣言で中止させられてるのが本当に憎らしいです。
by 竜眼 (2021-05-04 18:22) 

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