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書く女(世田谷パブリックシアター 1/23 14:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

樋口一葉の生涯は、中学生の頃見たドラマで一応知っていました。
(今調べたら、1985年のNHK、大原麗子が一葉、石坂浩二が桃水でした。)
一葉が好きだった桃水は、現代では全く評価されていない、
というあたりが子ども心に「へぇ~~」という感じだったのですが。

あー、それを永井愛はこういうふうに描くのかあ、と。

観ている間は、そこそこ面白いな、ふむふむ、という印象だったのですが、
終わってからジワジワと来ます。


死ぬ間際、幻想の中に桃水があらわれるのに、
一葉はそれが誰だかわからないのです。
「ああ、あなたへの想いを私は、小説に書ききってしまったのだ!」
という独白こそが、「書く」ことそのものを表しているではありませんか。

厭う恋、したくもないのにしてしまう恋、忘れたいのに忘れられない恋、
それこそが恋の醍醐味。
と言っていました。なるほどなるほど。
(幻を恋うてしまうヅカファンにはよーくわかる心情です 笑)
それを小説という器にそそぎこんでしまう。
自分の中から消え去ってしまうぐらいに。

それほどまでに「書く」ということは、
一葉の最初の目的、「生活のために小説を売る」とは全く違う。
まさに「文学」への目覚め。


トーンとしてはけっこうコミカルで、楽しく観られます。
貧乏なこと、
人に理解されないこと、
揶揄されること、
そうしたこともテンポよく笑いながら描かれます。

ピアノの独奏がBGMと効果音を兼ねていて、透明感があります。


一葉役の黒木華は、映像の人という印象でしたが、
なかなかです。イキイキしてました。
(初演の寺島しのぶといい、和顔でないとダメなんですね、この役)

桃水が、平幹の息子の平岳大。
これがいい声でねぇ~。←いい声に飢えている今日この頃…(> < )
桃水は、一葉が恋してしまうような色気と、若干の小物感と、
そして、日清戦争に反対するような開明性と、
いろいろがなくちゃいけないけど、すごく合ってたと思います。

一葉のお母さんが木野花。
士族(といってもお金で買った身分)としてのプライドが高く、
日清戦争での日本の勝利に陶酔するような、古いタイプの女性を
コミカルに演じていました。
若い出演者が多い中、びしっとしまります。


若い出演者というのは、一葉の友人たち。
萩の舎のお嬢様たちと、『文学界』の同人たちです。

このあたり、詳細を知らなかったので、へー、ほー、
と思いながら観ていました。
文学青年たちにめっちゃモテてたんですね、一葉女史。
馬場胡蝶、斉藤緑雨、川上眉山…この人たちってこういうキャラだったんだー
橋本淳くん以外は知らない役者さんばかりでしたが、どなたも魅力的でした。
橋本くんは平田禿木という英文学者の役で、(この方のことは全く知りませんでした(^_^;)
一葉を『文学界』につないだ重要な人物だそうです。
少年のような寝癖キャラがお似合いでした。

お嬢さんたちも、それぞれちゃんと描かれていて無駄がありません。
洋装で日本初の女流作家で先駆的、
だけどじつは父親や夫の後ろ盾あってこその田辺花圃。
大店の娘でクリスチャン、一葉の小説には「ハッピーエンドもないし、教訓もない」
と世間一般の声を代表しつつ、一葉にお金を貸してくれる可愛らしい伊東夏子。
女学校の教師として自立していて、
愛国心に満ち満ちて、将来は国防婦人会の代表になりそうな野々宮菊子。
当時の女学生のあるべき姿として、結婚し子どもを産んで、
でも夫が死んだら子どもを残して再婚しなければならない、桃水の妹、幸子。

それぞれの生き方が、後からジワジワと沁みてきます。


そんな時代に、生活のために書きだした一葉。
男性の後ろ盾を一切持たずに書いた初めての女性。

演出がやや平板な気がしたのだけれども、
特に、上述したように、生活のためではない、
「文学」に目覚める瞬間!
みたいものを、もっと強調しても良かったのでは。

そして最後に、桃水のことをすべて書ききってしまったのだ、
というクライマックスをもっと盛り上げたら、
テーマが絞られるのにな、と後から思いました。


個人的には、一葉が明治20年代の人だということはわかっていて、
日清戦争も明治27~28年ということはわかっているのに、
それが同時代のことだとは認識していなかったため、
桃水や文学界の青年たちが日清戦争について語ったりすることを
「へえええ」と思いました。
日清戦争もので儲けた博文館の興隆が文学に与えた影響などなど。

それに、たった30年前が明治維新なわけですよ、彼等。
私が中学生のとき、一葉のドラマ見てたのが30年前…!!
うわー、ポストモダンのこの停滞。
明治維新から日清戦争までのこの激動。

そして、この約10年後に漱石の『坊ちゃん』。
この頃の日本語の変化の激しさにもあらためて驚きます。

24歳6か月で死んだ一葉。
今と当時とでは、24年6か月の密度は全く違うものだったのでしょう。


そんなこんなで、
後からジワジワ「良かったなあ」と思うお芝居でした。



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月組観ました [観劇メモ]

お久しぶりです。
一応、生きてます(^_^;)


月組を観てきました。

久々の劇場、喪失感を味わうかなと思いましたが、
案外、そうでもなく。
花組以外だと、以前からこんなスタンスで観てたっけ、という感じで。
(裁判直後が一番つらかったです、そういういう意味では。)

たとえて言うなら、昔通ってた学校、かなあ。
記憶は鮮明なのに、
この建物でそれが起きていた、というのがもはや実感しにくくなっていて、
でも建物の仕組みとかは熟知しているので、
勝手知ったる…という感じで忍び込んでいる。
ちょっと前までは、昔習った先生もいたから
遊びに来るのも楽しかったんだけど、
その先生がいなくなって、完全にアウェーになっちゃったなあ。
という感じ。

と、ここまで書いて、
あ、やっぱりイメージとしては「学校」なんだな、と(笑)。
(ふみか様が「先生」設定なことにも。笑)


で、『舞音』ですが。

みやるりが主役だと思いました。
私がみやるり好きだからだと思いますが、
主人公の心情をダンスで表現する部分ほぼすべて受け持っているので、
そればっかり見てました。
(残念ながら、せっかくのラブシーンは、
かのはときが苦手なのであまり見ていない…)

そういうわけで、全容がよくわかっていないかもしれません(^_^;)

植田景子作品にしては破たんがなかったと思います。
フランス領インドシナに設定を変えることで、
搾取と被搾取という構図が明確になりました。

そこで苦悩する主人公(みやるり)。文学的~。

政治犯を奪還する作戦が、歌で心を動かして成功する、
っていうのはちょっと甘いけど、ミュージカルだからしょうがない。

音楽は新しい人なんでしょうか、拍手しづらいのはわざとなのかな。

ショーはタンバリンが無意味な間延びしたプロローグ、
どこがジャズなんじゃい。

でも、すーさんがソロ歌う大人ぽい場面と、
Love for saleで踊りまくる場面は素敵でした。
トシちゃんのうざいほどかっこいいダンスにほれぼれしました。

あと、類人猿から進化する場面でのちゃぴが神々しかったです。

しかし月組は、たまきちと、朝美さん? 以外、スターがいない印象。
別格は、いっぱいいるのになあ。
私は別格が大好きだからいいんだけど、でもこれからどーすんだ。

たまきちはトップにふさわしいと思うけど、
しばらく二番手で鍛えてもっと色気を出したほうがいいのに。

スターを育てるって、難しいですな。



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