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『BUND/NEON 上海』というか杜月笙の予習 [ヅカ的近況]

「腹がへって盗みを働いた〜♪」

とか歌ってましたね。『蒼いくちづけ』のデイブさん。

やだー、紫峰七海さんてめっちゃかっこいー、とか頭の半分で思いながら、もう半分では「なんだその歌詞、ベタすぎるだろ。アホか。設定そのものがベタだよなあ。やっぱイケコはこれだから。」とか思ってました。

こ、こ、こ、小池先生、すみませんでした!!!(土下座)

杜月笙に関する本を読んでたら、そんな人、ふつーにいました。うじゃうじゃいました。

上海の田舎の貧しい村。飢餓か疫病で人がばたばた死ぬのが当たり前。両親とは死に別れ、妹とも生き別れ、親戚のつてで上海の果物屋で奉公することになっても、地道な仕事には向かず、日々、賭博や盗み。上手くいかなかった日は死にそうになりながら野宿…。

頭では、「昔はみんな貧しかった」って知ってるけど、伝記みたいなので読むと、重い。(ま、その重さを歌詞に反映できないイケコの語彙の少なさは依然としてあるんだけど^^; )デイブの設定を、瞬時に「ベタで陳腐だ」と思ってしまう自分の感覚自体が、現代の、恵まれた世の中に生きていることの証だったのだなあ。

そんな、どん底にいる人が成りあがってワルになるからには、相当なワルなわけで。。。マフィアのボスっつったって、単にアヘン取引で儲けるだけじゃー、ないわけで。。。

この人が具体的に歴史上の事件で名を残したのは、1927年の上海クーデータ、ですかね? 1924年以来、地方軍閥に対抗するために、国民党と共産党は協力しあってたけど(「国共合作」というそうです)、だんだん国民党としては共産党がうざくなってきた。殺しちゃえ by 蒋介石。了解 by 用心棒のヤクザさん(=杜月笙)。

にしたって、デモ行進する人たち何百人を一斉に殺すって…、どうよ。共産党のリーダーを生き埋めにするって…、どうよ。

怖い、怖いよ〜。

デイブのとき、悪役初心者でNOW ON STAGEで「24時間悪に生きなきゃいけないの?」などと戸惑っていたふみかちゃんを、わたくし、「お金持ちになりたいとか、モテたいとか、ちょっとぐらい共感するとこないのかなあ」「ジェンヌさんって、ほんとに清らかだな〜」「ひきかえ、自分て、すごいワルで汚れてるわ」と思っていたけれども。

いやー、杜さんにはさすがに共感しづらいです。

でも、そういうものなのよね、戦争もね。タカラヅカでは、軍人さんはかっこよく描かれるけど、所詮は大量殺りく。マフィア、ギャング、ヤクザは言わずもがな。任侠映画とかの系譜でかっこよく描かれるけど、本当のその世界は、血なまぐさ〜くて、全然美男子でもなんでもないんだよね。。。ふう。(杜月笙は若いときの写真はまあまあかしら。でも猿顔で耳が大きい)

杜さんは学校にほとんど行ってないから、学はない(字を読むのも苦手)けど、銀行とか出版社とかにも参入して、上流階級に食い込もうとしたらしい。労使交渉の解決(といっても金とか裏取引による)で名をあげたらしい。めちゃめちゃ頭が切れる人のようだ。力関係とか、政治的なものの嗅覚がすごかったんでしょうなあ。協力し合ってた人も、都合が悪くなったら殺しちゃうし。

でも、主義主張は一貫してるのかねー。それとも単に、蒋介石につくのが有利だと思っていただけなのか、やっぱり共産主義じゃ儲からないからってだけなのか。

まりんちゃん(悠真倫)が演じる張嘯林のほうが、主義主張よりもそのときそのときに儲かるほうにつく柔軟なイメージ。だから最後はふみかちゃん側に殺されちゃうんだけど…。(役名で言おう、怖いから)

むしろ、二人のボスである黄金栄のほうがまりんちゃんのイメージだなあ。ちょっと鷹揚な。この人は杜の20歳上、張の10歳上で、「もう年だから」と上海に居続け、共産党革命が起きたあとには、かつて自分が君臨していた上海の街を掃除夫として掃除したというから、切ない話だ。

娯楽施設「大世界」(といってもマフィアの経営になってからは悪の巣窟)を経営してたのはこの黄だけど、稽古場レポートによると杜がやってることになってるから、この作品では、実在の杜月笙というよりは、マフィアのボスを象徴的に表現した人、なんだろうね。

第二次大戦で租界がなくなってしまった途端、杜の権力がなくなっていくのが象徴的。租界という治外法権の場で、列強各国、国民党や共産党、軍閥、抗日運動、法を逃れてきた札つきのワル…いろんなものの微妙なバランスをとって君臨する、ということの存在意義がなくなっちゃった。だからこの人、「魔都上海」の象徴そのものなんだ。

デイブ以来、悪役続きのふみかちゃんがどれだけすごい悪い人なのか、楽しみ…。っていうか、むしろ、怖いよ〜。マジでふるえあがっちゃったらどうしよ〜。

それにしても、蒋介石はずっと兄弟弟子みたいなもんで、協力しあってきたのに、自分がチンピラ出身だって知られたくないから、って急に手の平返すなんて、ひどいわ。…蒋介石がチンピラだったってのも、初めて知ったんですが。そもそも最初は、蒋介石って誰だっけ、辛亥革命ってなんだっけ、とゆう状態で、大学受験のときの世界史辞典を引っ張り出してきちゃったよ。ネットでは、NHKの高校世界史の「革命の世紀と中国 〜毛沢東の生涯〜」がわかりやすかったです。

読んだ本は、とりあえずwikiに載ってた3冊。
『上海の顔役たち』 (沈寂著 徳間書店)黄、張、杜の3人を通じて当時の全体を書いてあるのでわかりやすい。
『中国マフィア伝―「上海のゴッドファザー」と呼ばれた男』(西爾梟著 河添恵子訳 イーストプレス)杜月笙が主人公の小説みたいな感じ。長いけど、一個一個のエピソードは面白い。
『オールド・シャンハイ―暗黒街の帝王』 (リンパン著 毛里和子訳 毛里興三郎訳 東方書店)訳がわかりにくいが、「中国人とは何か」みたいな視点がある。

今、配役見直してて気づいたけど、もえこ(愛純もえり)が第一夫人の沈素娥で、輝良まさとが部下の万墨林なんだね。ほほ〜。

あと、この時代の上海が舞台になってる映画もいろいろあるけど、初日までに間に合わないよー。

::::::::本家はコチラです→a posteriori takarazuka:::::::
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