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太陽2068(シアター・コクーン 7/16 19:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

今から50年後ぐらい。細菌兵器だかで、太陽の光をあびられなくなってしまった、しかし知能と体力が発達した新しい人種ノクス(夜の意味)と、 今の我々と同じ人間キュリオ(骨董品の意味)が、互いに羨望しあったり、差別しあったりするという話です。

ごく簡単に譬えると、近代化された社会と、そうではない社会の対立。

しょっぱなは、差別されるキュリオの側に感情移入しそうなんだけれども、完全な村社会で頑迷で愚かしい様子が、「あー、あるある(うんざり)」っ て感じだし。そういう中で極端に暴力的な人がいて、みんなの足をひっぱるっていうのも、「あー、あるある(うんざり)」。

いろんな人がいて、ノクスになりたいキュリオの若者(若いうちに感染すれば変化することができるそうな)、ノクスになったけど後悔してしまう人、 自分はノクスを憎んでいるけれども娘はノクスにしてあげたいキュリオのおじさん、、、それぞれに感情移入できる。

設定自体はかなり突拍子もないものなんだけれども、決して荒唐無稽にならない。

ノクスになりたいキュリオの若者が初主演の綾野剛。愛嬌があって勢いがあってコメディセンスもあって、堂々たるものでした(主役以外 の役ができるかというとやや不安だが)。キュリオに興味がある、キュリオの村の門番(おまわりさん)になったノクスの若者が成宮くん。いい感じにオジサンになってきた。穏やかで冷 静で、ちょっと架空度が高くて似合ってる。この二人が、喧嘩したりしながら心を通わせていく様子の脚本がすごくいい。

そもそも、プロットそのものもすごくよくできてて、いろいろな伏線のようなものがどんどん回収されて、最後、若者二人にとって希望のある終わり方 になっていてカタルシスを感じた。(蜷川演出ではない元の演出では、それほど希望はないそうで…気になる)

もう一人初舞台の前田敦子もキュリオの若者なんだけど、こちらはいまいちでした。決して下手ではないけれども、演技の温度が低くて、すぐに平熱に 戻ってしまう感じ。のたうちまわるところなんかは見ていられない。ただ、あの年代特有の不機嫌さの混じった透明感があって、ちょっと池脇千鶴を思 い出した。

キュリオの愚かさを目の当たりにした彼女の変化こそがクライマックスに位置しているはず。観ている最中は、クライマックスの位置がちょっとずれて いる気がして若干違和感があったんだけど、後から思うと、クライマックスとして成り立ってなかったんだ。補強する ために、ニューキャラを投入して、レイプされる(未遂かも)という場面を入れたんだろうなあ…。

キュリオ側では、六平さんの強烈さが印象的。中嶋朋子は生で観るのは初めて。耐える役が似合うなあ。暴力的で足をひっぱる人の役者さん(横田栄司)が、めっ ちゃめちゃ怖かった。本気で怖かった。あと、ずっと股間をいじってる若者がいて、こちらも本気で怖かった(内田健司 普段はきっとイケメンさんなのであろ う…)。こういう人たちがいるキュリオは、本当に野蛮で多種多様で、魅力的。

一方ノクス側では、差別的でクールなNOVAの鈴木さん(山崎一)、普通にうまい。ノクス側は、今の人間よりもハイパーだってことで、ちょびっと感情移入し づらく、むしろ、架空度を期待する。で、キャンディーズの蘭ちゃんなんですよ。ほそっ、しろっ、うつくし!! 60歳近いとは思えない美しさに、 けっこうな大芝居、にょろにょろ感。こんなかっこよくて妖しい女優さんだとは知りませんでした。

舞台装置が面白くてね。舞台の床がスケルトンになってて、舞台の下(最前列から見るとちょうど正面)にノクス側の世界があるんです。青い光の柱で 支えられてるの。すごくいい席だったので、後ろからどう見えたかわからないんだけど、上は古い昭和の世界、下は近未来、とわかりやすい。そして上 の昭和のセットは、『滝の白糸』のセットと同じでした(笑)。

ノクスは黒、キュリオは白。あっちゃんの靴下は太陽の黄色。中嶋朋子の服は空の青。

元の劇団イキウメも観てみたいと思いました。
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