Gille（銀河劇場 2/23 18:00）

なんとも幻想的な、ダンスだけでつづられる狂おしい恋の物語。３日だけの公演なんてもったいない！

古典バレエ「ジゼル」の男性版で、西島千博がジゼルの生まれ変わりジル（男）を演じるという。そこに湖月わたるも出演するという。最初のチラシにはそれしか書いてなかった。…え？　わたるは男なの？　女なの？　誰しもそう疑問に思うよねえ。ジゼル（女）を捨てたアルブレヒト（男）の生まれ変わりをやるのかなあ？　だとしたらそれは女ってこと？　うーむ。。。あとから出たポスター画像だと、わたるが西島千博を翻弄してる。ますます男なのか女なのかわからない。

結果、わたるは男でした。ジゼルが男に生まれ変わるなら、アルブレヒトは女に生まれ変わるんだろう、という私の発想自体、あまりにも浅はかでした、すみません。アルブレヒトは生まれ変わっても男（アルトという名前だそうです）でした。だから、ジルは自分の中にあるジゼルとしての記憶に突き動かされ、アルトを恋焦がれる＝男が男を追いかけるという図になっているのでした。こういう筋書きをやろうと思った西島さんて…。日本画家の甲斐庄楠音のエピソードを思い出したりして。

でも、もしアルト役が本当の男性だったら（西島千博より背の高い男性ダンサーはそこそこいるだろう）、ほんとにむさくるしい感じになっちゃっただろうなあ。ここで、あえて「男役」を連れてきたところがミソだと思う。もちろん、男性ダンサーよりは跳躍力とかは劣るんだろうけど、なんというか、イデアだけが男なのね、わたる。男役芸だけで成り立っている男。それが、本当の男よりも男に見えるし、ジルが恋焦がれる記憶の中の男という幻想的な存在を成立させている。もちろん、わたるは身長も高いし顔立ちが男っぽいから、ってのもあるけど。（リカちゃんじゃできないな…）

オープニングは真っ暗な中に、青い光が２〜３個ゆらゆらと揺れていて、ジゼルの魂かな？　と思わせる。そのわりには動きがスピーディなんで、何かと思ったら、なんとマリンバの撥にライトをつけたものなのでした。マリンバ奏者SINSKEの幻想的なソロから始まり、舞台には門。門をくぐると、建物の中？（パンフにはとあるクラブと書いてあった）。アルトがバスタブに百合の花（処女の象徴）を捧げに来る。ジゼルはきっと水死したんだろう（勝手な推測）。ジゼル役のバレリーナ（キミホ・ハルバート）とジルが相似形の踊りを踊ることで、生まれ変わりだということがわかる。ジゼルとアルブレヒトはベージュの服で、ジルだけが白。クラブのダンサーたち（古典バレエ「ジゼル」でのウィリーという、結婚前に死んだ乙女の霊に相当するのか？）とアルトは黒。台詞は一切ないけれども、ヒントはたくさんあるから、読み解いていくのがとても楽しい。

クライマックスは、ジゼルがアルトを自分と同じ水の中（？単に霊界？）にひきずりこもうとするのを、ジルがとめる場面。なんで生まれ変わりなのに、とめるんじゃー。アルトがバスタブの前まで来た！　なのに、いざというところでジゼルは成仏してしまうの。あー、もう、連れてっちゃえばいいのに！　んもう！　古典バレエの「ジゼル」でも、ジゼルの霊は最後の最後であきらめるのだそうです。元を知っていれば、倍楽しめたかもしれません。途中でジゼルとアルブレヒトがいかにも古典バレエってのを踊る場面もあったし。

演出は川崎悦子。我々が大好きなオギー作品での振付場面なんかからすると、やっぱり『スィートチャリティ』みたいなハッピーなミュージカルよりも、こういった幻想的な世界が似合うのでしょうかね。

…え、わたるの芸能生活20周年記念講演をたっくん（大野拓史）が演出！？　たっくん初のショー作品！？　楽しみなような心配なような（笑）。

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