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ヨコハマメリー [近況]

やっと観れました。地元では超有名人のメリーさんのドキュメンタリーだということで、映画館は連日満員なのです。横浜の古い繁華街、伊勢崎町に出没していた白塗りの老婆「メリーさん」。私は残念ながら見かけたことはないのですが、友達は本屋のトイレで隣の鏡に映って、度肝を抜かれたとか。GHQ相手の娼婦であったということだけが知られています。

この映画は、もう街でメリーさんを見かけなくなってから撮影されたもの。正直、もういない人だから、映像もなくって、ちょっと無理矢理なんじゃないかと予想してたんですが、そんなことは全然なかった。ごくわずかな、往時のメリーさんの映像と写真(写真は若い頃のものもあり)を縦糸とするなら、横糸には、関係者の生き様が描かれています。友達で自身も男娼の経験があるシャンソン歌手、髪を切ってあげていた美容師さん、かつての商売仲間の芸者さん、メリーさんを一人芝居で演じている五大路子・・・いろんな人の証言でメリーさんの生き方が浮かび上がると同時に、伊勢崎町という町に流れた数十年の時間、そこに生きた人々のドラマ(フィクションじゃなくて!)がいろんな陰影をもって現れては消え、なんだかズシンと来る映画でした。

でも一番心に響くのは、メリーさんの生き方と、メリーさんに対する人々の気持ちでしょうね。真っ白い化粧で、白いフリフリのドレスを着て、でも顔はしわくちゃで、メリーさんはちょっと異様な存在です。若い頃ならまだしも、年をとってからそのファッションではちょっと・・・という。私の職場にも、そういう傾向の人がいまして、もう定年退職したんですが、金髪みたいに髪を染め、かわい~い花柄の服で、かんだかい声でお話してました。私もけっこう年甲斐のない恰好してるので「将来自分もああなるかも・・・(-_-;) 」という目で見つめておりました。自分を客観視できないわけですよ(私含む)。そういえばタカラヅカにもちょっとそういう傾向の人がいますね(笑)。いつまでも「初心を忘れない娘役です」というが・・・。

ただ、その方や、私の職場にいた人は、恵まれた環境にある人です。でもメリーさんは違う。はっきり言って、底辺にいる人です。住む所がない。生活保護ももらえない。寝るのはビルの廊下。お風呂はどうしていたのかなあ。心ない人からは白い目で見られる。なのに、メリーさんはもんのすごくプライドが高いんですって。施しは絶対に受けない。お花代としてなら受け取る。寝場所にしているビルの社長さんにはお中元お歳暮を贈る。面白そうな興行はちゃんとチケットをとって観にいく。娼婦仲間と気安く口を利いたりしない。組織に属することなく、ずっと一人で商売してる。そして、何十年も前にアメリカに帰った将校をずっと待ってる。

ほかの同業者は、戦後の混乱期はともかく、だんだんと時代にあわせて、組織に属したり、そして住民登録をして、いつしか足を洗ったりして、それなりに馴染んでいったのでしょうね。それが「賢い」生き方だと思う。でも、メリーさんのように、底辺にいながら、絶対に自分のやり方を変えなかった人、そんな人にどこか憧れ、畏敬の念を抱いてしまうんだなあ。滑稽だけど、もはや滑稽さを通り越してる。いや、むしろ、滑稽さの中に偉大さがある! 五大路子の一人芝居では「メリーさんがんばって!」という掛け声がかかるそうです。

そんなメリーさんをうんだ街、メリーさんを排除しなかった(しようとした人もいるけれども、結果的に排除しなかった)街、メリーさんが愛した街。横浜は、やっぱりいいなぁ、なんて思いました。父が就職して横浜にはじめて来たとき、「横浜の人はなんでもありだ」と思ったそうです。今日も道端で、不思議おじさんを見ましたよ。頭に、直径1メートルぐらいのすごい飾りをつけて、自転車で出没するのです。でも誰も排除しようとはしない。じろじろ見たりもしない。なんでもあり、ですから。

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★↑もみあげ第三弾アップしました~★


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