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黎明の風/Passion 愛の旅(宝塚大劇場 2/16 11:00) [観劇メモ]

「もはや戦後は現代ではない」、なんてね。夢の世界タカラヅカでは、高度成長期以降は「現代日本」を取り上げたことが、ほとんどない。でも、去年の『黒蜥蜴』しかり、今回の『黎明の風』しかり、戦後60年経って、当時現役だった人がどんどんこの世の人ではなくなって、いよいよ戦後という時代も、語り直されて歴史の中に編入されていくんだなあ。そんなことをしみじみと考えた。もちろん、それに抵抗感がある人はまだまだいるだろうけど、世間で高度成長期が『プロジェクトX』になったり、東京タワー建設が映画になったりしている今日このごろ、戦後が「夢の世界」として違和感なくなる日はそう遠くないと思う。

で、タカラヅカの文脈で新しく編み直された、時代劇的(石田昌也談)な戦後はどんなものかとゆうと。

GHQに唯一屈しなかった白州次郎が主人公。マッカーサーとの友情、正子との夫婦愛。…あたしゃてっきり、マッカーサーが帰るところがクライマックスなのかと思ってたよ。だがしかし! クライマックスはサンフランシスコ講和条約だったのだ!

そっか、そうだよね…。私(70年代前半生まれ)が小さい頃習った現代史だと、敗戦から頑張って経済復興しました、って筋書きで、アメリカから独立したってことはスルーだった気がする。せいぜい沖縄復帰ぐらい? 昨今の「愛国心」ブームなのかねえ。あっ、そうか、当時は学園紛争の記憶が生々しかったから、その根源であるサンフランシスコ講和条約には触れなかったのか。正直、ラストで日の丸がいっぱい出てきたときは、ぞっとしたなあ。でもよその国に支配されるってそりゃ屈辱的だよなあ。でもでも、昔教科書に載ってた『最後の授業』、ドイツに占領されるアルザス地方で、最後に母語であるフランス語の授業をする、というあれ、本来はドイツ語が母語の地方で、フランス語のほうが無理矢理しゃべらされてたっていう、大嘘な話なんだとか。じゃあ母語ってなんなんじゃい。アメリカに追従するのはやだけど、ミュージカルは好きよ。だけどそもそも国なんかに支配されるのだっていやなのよ。ああ、わけわからん。

というような政治的な迷いを、けっこう上手にかわしてるなあ、というのが『黎明の風』の印象。「国を愛する心は大切だ」:「でも溺愛しては国が滅びる」。「この憲法は押し付けられたものだ」:「でも我々がそれを選んだんだ」。「自衛隊なんか作るぐらいなら再軍備をするべきだ」:「戦争放棄の条文は素晴らしい」。結局どっちなんだー。チョー保守的なタカラヅカとはいえ、一応、左方面から何か言われても言い訳できるようにしてるんじゃないかなあ? 

ただ、天皇の戦争責任については、両論を呈示することはいっさいなく、結果としては天皇家ヨイショ作品ではあります。それはそれで、正しいのかも。世論的に。GHQが、天皇家に対する国民の意識を占領のキーとした当時と、今と、変わらないんだろう。ぜひ天皇家に天覧いただきたいですね。

といっても私、政治にも軍事にも詳しくないので、不安もあり。。。緑豆にはやく観てもらわないといかんな。

白州次郎はとにかくカッコいい。私の好きな鬼っ子様なトドさん。オープニングの、遺言書を背負ってセリ上がってくるトドさんに、笑っちゃうけどかっこいい! きゃー! とテンション高くなったせいか、最後まで楽しく観られた。マッカーサーはスタイルよすぎだが、スタンドプレーが好きなアメリカ人って感じがして、タニ健闘。なんといっても、ゆうちゃん! ゆうちゃんの吉田茂あってのこの作品だわよ。ウメファンには不幸中の幸いか、正子役は出番が少なかった。でも楽しそうな役だね。ああいう女性像は好き。音乃いずみの地声ブギもよかった。組長への退団はなむけの台詞がいっぱいあったのには涙。こういうところが、石田の憎めないところ。

いろんな人にそこそこ役があって、でもストーリーが「目指せ独立」と明確なので、竜馬のときみたいに散漫ではなかった。お下品ネタは一個しかなかったし(あれはすぐに止めてほしいが)、内輪受けも微笑ましかった。あ、そうそう、特攻隊ダンスの銀ジャージ衣装は変だったが。あとね、ほっくんとか部下が「〜ってことですね」と解説役になってるのも、気になった。ってけっこう突っ込みどころ、あるな。

ショーは、退屈かなあ? と思いつつも、あっというまに終わった。楽しかったのかも? ラテンの場面でもなぜか昭和の香りが澄夫ちゃんテイスト。大階段のとか、あれ、何のノリなわけ? 唯一気になったのは、らんとむのモミアゲが前に出過ぎではないかという件です。。。

::::::::本家はコチラです→a posteriori takarazuka:::::::


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