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炎 アンサンディ(シアタートラム 3/10 19:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

初演のとき評判良かったな、
ターコさん主演だし、取っておくか、
という軽い気持ちでチケットを取りました。

観劇が近づくにつれ、
なんだか重い話みたいだからどうかな、うーん、
と気乗りせず。

だがしかし!

こりゃすごいわ!
チケット取ってほんっとーーに良かった!


重いは重いです。
最重と言ってもいいです。
(あ、うそです、『マーキュリーファー』の重さはどんな作品でも超えられない)

最初の舞台はカナダ。
お母さん(ターコさん)が死んで、のこされた双子の姉弟が、
「父と兄を探して手紙を渡せ」という
お母さんの遺言を果たすうちに、
衝撃的な自らのルーツにたどりつく。

…冷たかったお母さんの過去はどんなだったのか、
「兄」とは誰か、「父」とは誰か、
という謎解きで進んでいくので、
3時間以上の長い芝居でも、全く長く感じない。

お母さんは、中東の、
日常的に戦闘(「衝突」じゃないよ)が起きている国の出身。
なので、過去の場面と、姉弟が調査しにくる場面ではそこが舞台。

作者はレバノン内戦を逃れてカナダに移民したそうで、
レバノンが舞台らしい。
でも国名とかは全然出て来ない。
あえて抽象的にしているんだと思う。
同じことが、いつ、どこでも起きうるのだ、と言うために。

読み書きもできない育ちで、幼い恋も、生まれた子どもとも引き離され、
内戦が始まってゲリラ活動に身を投じ、
子どもを探し続けても、孤児院は焼かれ、
投獄されてからは拷問やレイプに遭い、、、

「アンサンディ」という原題は「災害」「火災」という意味だそうで、
まさにそんな人生ですよ。


お母さん(の若い頃)と、その友人が、
報復につぐ報復をいかにとめるか、
いや、こんなことされて、あとは報復しかないだろう、腕組みして見てるのか?
と言い争う場面は、(「父」「兄」の種明かしをのぞけば)白眉。

○○が殺されたのは、××に△△を殺されたから。
××が△△を殺されたのは、◇◇に◎◎を殺されたから。
◇◇が◎◎を殺されたのは…
無限の報復連鎖。

「たーたかいーはあらたなー、たたかいをーうむーだーけー♪」
なんだけどさ、
現実問題、その場にいたら自分だってどうするかわからない。


観劇後何日経っても、いろんな場面を、
しみじみと思い返すんだけど、
そのたびに、発見がある。

上述の場面で、報復したいと友人が思った直接のきっかけは、
三人の息子を殺されそうになったとある母親が、
「一人選べ、そいつだけ助ける、選べなければ全員殺す」と
脅されたということだった。
子ども三人…、双子の姉弟と、彼等が探す「兄」も、三人だ!

お母さんは祖母(双子からしたらひいおばあちゃん)から、
「書くこと、読むこと、話すこと、数えること」を学びなさい、と言われる。
…娘(双子の姉)は、数学者なのだ!

冒頭で彼女が、多角形について教えている場面があって、
この点からはこの点は見えていない、云々と言ってるんだけど、
ああ、それって、「父」「兄」のことなんだなあ、とか後からわかる。

そんなふうに、いろんなことが象徴的にリンクしていて、
全く、無駄がない。


そして、演劇ならではの表現がたくさんあって、
楽しい(筋書き的には「楽しい」とは無縁なんだけど)。

過去と現代を行ったり来たりする、
過去の人物と現代の人物がすれ違ったり、

遺言について話している公証人の部屋で、
隣が工事しててうるさくて、というその音が、
そのまま過去の場面のライフルの音につながるとか、

舞台の真ん中の穴が、
土葬のためのくぼみになったり、
狙撃兵が隠れている塹壕になったり。

映画にもなったんですね。(邦題『灼熱の魂』)
映画だとこういう仕掛けはできないだろうなあ。
(そのぶん映画ならではの表現があるのだろう、いつか見たい)


ターコさんは10代から60代まで、
恋する乙女から、かっこいいゲリラ、そして菩薩様のようなラスト…
憎しみと慈愛の共存、素晴らしかったです。
(ああ、そうだ、やっぱり、元宝塚の男役の良さは、力強さと慈愛なのだ)

オカケンが重要な役なんですが、
ほかにも何役もやってて、
ジャニーズの人とは思えない(失礼)、立派な役者さんだ。
最後、泣いてました。

双子の弟が小柳友、
『非常の人』でオカケンと共演してましたね。
華があって生意気で、
最初はお母さんの過去を知ろうとしなかった彼が、
だんだん変わっていくのが、ドラマチック。

双子の姉(栗田桃子)、それからお母さんの若い頃の友人(那須佐代子)、
お二人とも、今まで観たことありませんでしたが、
一見、地味なのですが、
しゃべりだすとすごい!! 引きこまれる!
いろんな役を次から次へとやってた中村彰男も、
演じ分けが上手かった。


一日1回公演しかないのが納得の、
全身全霊でないと演じられない芝居でした。


…ネタバレしないようにしているので、
半分も語っていません。
まだまだ語りたいことがあるのよー。


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コメディ・トゥナイト(新橋演舞場 3/5 16:30) [観劇メモ(ヅカ以外)]

ソンドハイムの作品というと『南太平洋序曲』を見たことがあるけど、
すごく難しいという印象。
でもこれは単純なドタバタコメディなので、わかりやすかったです。
女装したり、人を取り違えたり、というよくあるやつ。

でも多分、日本人にはわからないことが多いんじゃないかな。
古典を踏まえたりしてるんじゃないの? と思った。
それか、すごくシニカルでドライな話??
あと、韻を踏んだりしているはずだよね?

ヒロインがものすごくバカだったり、
身分制度が歴然としてあったり、
武士がものすごく横暴だったり、
普通のお話しだったらちょっとあり得ないぐらい「よろしくない」ことが多い。
あえてそうしているとしか思えない。
でも、その意図は伝わってこない。
なので、大爆笑というわけには全然いかない。

あ、だからやっぱり「難しい」んだな。

主役はラブリンで、ひたすら動く役で、恋愛も発生しないので、
なかなかやりづらい役だとは思うが、まあ合ってたんじゃないでしょうか。
(藤原紀香が客席入口でお知り合いにご挨拶してた)

女装させられるルー大柴が良かった。
下手うまなの。山田花子みたい。
棒読みなんだけど華がある。
このキャスティングがあるからこそ、成立してた。

あと、老人役の徳井優がものすごく上手かった。
ちょろっと出てきて、ちょろっと台詞言うだけなんだけど、
拍手喝采。

おばかなヒロインが平野綾。
はじめて見たけど、うっとり顔とうっとり声ができてて、
ヅカっぽくてすごくいい。

ジェントルマンな印象がある鈴木壮麻さんが、
マッチョでバカな役で、ちょっと無理してて切なかった。
歌はめちゃウマ。

女郎屋の主人のダイヤモンド☆ユカイが一瞬、山本耕司に見える。
まあこのひとも上手いよね。うさんくささ含めて。

お母さん役の松田美由紀が芝居が下手だったのと、
お父さん役の高橋ジョージが芝居や歌は下手じゃないんだけど、
美しくないのが、残念だった。


それと、どうしても書いておきたいことがある。

「女中に夢中」という曲があって、
オッサンは若い女中さんが大好き、という内容なんですが、
それ自体はまあ、そう思うことは勝手だし、よくあることだろうし、
オッサンはバカだなーっていう曲としてアリなんですが。

その中に出てくる「秘密を守ってくれる女中さん」
「夜は自分の部屋に来てくれる女中さん」っていう歌詞に顔面蒼白になった。
それはあんたが雇用主の権力で無理強いしとるだけだろうが!

オッサンがそう思うのは勝手だけど、なんの批判もなしに
「楽しいナンバーですよー」「嫌なことが一つも起きないお芝居ですよー」
という触れ込みで、搾取を肯定する歌詞を垂れ流さないでほしい。

たとえば歌い終わったあとに上からバケツの水が降ってくるとか、
そういう批判を入れればいいのに。

ほかにも、「あの子はバージンだから」と30回ぐらい言ってて、
1~2回なら「オッサンのたわごと」で済むけど、連呼しないでくれ。

設定として女郎屋がメインだから、
その手のことを取り除けというわけではない。
歴史的にどこにでも存在していたこと。
ただ、「搾取」をあからさまに肯定するな、ということです。

ふ~

あ、今回も(←亜門演出という意味)、
咲良さんがアンサンブルで出ていて、
長い手足とダンス力をいかした役でした。
ほんと華やか。

曲はなかなか良かったです。
演奏する人が和服で、最初に花道を通ってやってくるのもいい演出。


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