SSブログ

PUCK / CRYSTAL TAKARAZUKA(東京宝塚劇場 11/27 18:30) [観劇メモ]

この作品で音楽学校受験を決意したとか、演出家を目指したとかいう人が多い、歴史的な作品ですよね。初演は映像で見ただけなので、一体どこがそんなに人々の心を曳きつけるんだろう、と思っていたんですが。。。

あー、宝塚って本来こういうものだよねー、と思った。

大劇場の(東京よりも)ゆったりとした造りとか、周辺ののどかな雰囲気とか、阪急沿線の上品な住宅街やら、神戸の坂から見える海やら、東京砂漠と違ってちょこちょこと都会が点在する関西全体の空気までもが一気に感じられて、ああああ、こういう雰囲気の中で、お嬢さんたちが芸を見せて、お嬢さんたちが観に来る、大人になってもまた観に来る、そんな健全な娯楽なんだよねーーー、と。

観客にとっては、パックが自分であり、ハーミアも自分。生まれたばかりの妖精で、いたずら好きで、ずっと森にいる。子どもの心を持ったままの文学 少女で、モテるけど奢らず、でも愛する家族や森のためなら自分を犠牲にする、なんてけなげ。なんて純粋。

それが、大人になって、男女の恋愛の枠組みの中で、でもドロドロした感じは一切なくて、これからずっと幸せに暮らすのよ。なんてすばらしいハッ ピーエンドなんだろう! こういう設定が、乙女心に来るんだろうなあ。悪者がそれほど悪くなくて、最後改心するのも健全。

話の展開もスムーズで、ナンバーの中で子どもから大人になるくだりとか、とてもよくできてる。


でも、今これが新作だったらどうなんだろう。「よくできてる」どまりなのかなあ。このあたりの感覚がわからん。

小池修一郎ヒストリーの中では、エコだのホテルだの典型的な金の亡者だのファンタジーだのは、これが最初らしい。(ていうか、このあとのオリジナルの大半が、この作品の自己模倣であったということか。)自分はディープなファンになったのが21世紀なので、小池修一郎のデビュー以降の作品の 変化を知らないのだけれども、パック以前の作品からすると、どうなんだろう。

そして、1992年当時はどういう受け止められ方をしたんだろう。トップが子どもみたいな妖精の役!? っていう反応はあったと聞いたことがある が。。。でも、涼風真世は『グランド・ホテル』でおじいさんの役もやっているから、今よりはそういうしばりは少なかったんじゃないか。妖精が主人 公というのは、スカステで見た『ミル星人パピー』(1982年)もあったし、そもそもがお伽歌劇をやっていたのだから、ある時期までは全然アリ だったと思うんだが、1992年ではどうだったのかというところが気になる。(谷の超駄作『JAZZYな妖精たち』(2005年)って、当時は 「ありえへん!!」って思ったけど、こうしたファンタジー路線の延長なんだなあ。今気づいた。)

それと、二番手、三番手といった序列がないのは、今の月組には好都合だろうけど、当時は普通だったんだろうか。今ほどそういうのがきっちりしてなさそう。(『歌劇』を順番に読むプロジェクトは戦後に至ったところで中断しているので、1990年代はまだまだ先です…)


演者について。

ヘレン! ヘレンがかわいすぎる!! 最初「この美少女は誰? こんな娘役いたっけ? ハーミアよりヘレンのほうが美人やん(ごめん)」と思ったら、コマだったーーー。顔は超絶美人、だけど体は大きく、動作ががさつで、性格も悪い。もちろん、健全なお話しだから、コミカルな「性格の悪さ」。いいバランスだなあ。ロミジュリのフィナーレで肩出したときは「ごつ!」と思ったけど、今回はそんなこともなく。マヤさんの後継者はコマだ と思っていたけど、専科になるし、これは本当に本当のマヤさんの後継者だね。今回、一番楽しかった人でした。

龍真咲は今までで一番合ってた。かわいかった。歌も変な癖がなかった。ただセリフは変な癖があって、パックは妖精なりに苦悩があるのにそこは形式的だった。でもアドリブとかのびのびイキイキしてて、それが役にぴったりでした。

みやるりがビリヤードしてた! もっすごいときめいた。しかしなあ、途中まで、この役が「いわゆる小池作品の典型的な悪役」であることに気付かなかった。どうしても、「悪い人」感が少ないの。お茶会に連れていってもらったことがあるのですが、本当に優しくてファン思いで、きちんとしたお嬢さんで。そういう性格が出ちゃうんだろうか。ここはひとつ、殻を破ってほしかった。好きなだけに。好きなだけに。好きなだけに。ぬおおお。そうそう、最後に退場するところは、重い芝居の真骨頂でしたね。

たまきちの若作りのすべりっぷりがすごかったなあ。でもそこが、スター感を増しているという。

わかばちゃんの美しさが際立ってた。月組は実力派娘役は多いけど、美人! かわいい! って子が今少ない気がする。

ショーは安定の中村A。まったりしそうでしない、ほんわかしてると思いきやちょいちょい暗くて激しい曲調がある、でもまあ普通だよね、という。シンデレラとオランピアが続くのは構成的にメリハリがない。中詰めが楽しかった。盆が回るとロケットってのは『ソロモンの指輪』みたい。終始、 ちゃぴのダンスばっか観てました。ちょっと、まーちゃん入ってきた(最上級の褒め言葉)。

つくづく、たまきちはすぐにでもトップスターになれそうだと思う(真風とたまきちのトップ就任までは宝塚を観ようと思う)。だがしかし、マギーとみやるりにも幸せになってほしいのよぉぉぉ(コマは専科入りでとりあえず安心)(つーか「幸せ」ってなんだろう)。はーあ、人事ってむつかしい ね。

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。