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ヒストリーボーイズ(世田谷パブリックシアター 8/30 13:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

雪組ラストデイですが、DVD買ったので(おい!)その感想をまた後日~。天気もつかな。

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80年代のイギリス。超優秀な男子高校生8人が、オックスフォードかケンブリッジを目指してワイワイと受験勉強、フランス語の授業でズボン脱いだり、そこに新しい先生が来て、ポーランド侵攻の話をしながら(戦争を比喩にして)壁ドンしかねない勢いで迫ってみたりして、萌えポイント満載。

というのが制作側の意図なんだろうけど、それはどーでもいいんです。

すごく深い脚本で、戯曲そのものを読んでみたいと思った。

文学作品の引用や歴史の用語がたくさんなので、映画で予習していないとつらかったかも。さらに、映画では伝わらなかったところ、毒気を抜いてたところが多々あって、映画よりも楽しかったという。予習しておいて大正解でした。


まずは教育がテーマ。

定年が近い変人のヘクター先生の授業が、とにかく楽しい。詩の引用を覚えさせ、映画の一場面を演じさせ、売春宿の設定でフランス語の授業をやるとか、自分も受けたい授業。だけど、ヘクター先生は、覚えた詩をひけらかすようなことはしてほしくないと思っている。芸術というのは比較したり利用したりするものじゃ、ない。

こういう授業って、いい教育だってことは誰にだってわかる。でも、正直、社会での役には立たないよね。芸術はなぐさめに過ぎないんじゃないか。文学は負け犬のものなんじゃないか。

そういう意見もよくわかる。

で、臨時で来た若いアーウィン先生は、とことん受験テクニックを教える。それも、日本のような詰め込み式じゃなくて、論述式だから、人目をひく論文の書き方。定説とは違う目新しい切り口をなんでもいいから考えろ、と。

確かに、それはウケる。試験官にだけじゃなくて、社会全体にも(だからアーウィン先生はその後、テレビに出たり政治家になったりもする)。でも、所詮「まやかし」。偽物。

どっちのやり方も、わかるなあ…。

二人の先生が一つの授業をやるというイレギュラーな形の時間で、アーウィン先生はホロコーストを題材にしようとした。ヘクター先生は「新しい切り口なんてこの題材には無い」と怒った。

だから、真のテーマは歴史。

「歴史なんて、クソみたいなことの連続だ」
「あの日、○○が歯医者に行かなかったら首相になって第一次大戦に負けていたかもしれない」(「偶然」という要素は、はラストの事故にリンクしているんだね)
「最近のことが一番遠くて解釈しづらい」
「本を読むということは過去の人から手がさしのべられること」

歴史の見方がいろんなふうに提示される。

さらに、たった一人の女性登場人物、歴史教師ドロシーの台詞「歴史なんて何百年と男の無能を羅列したものに過ぎないのよ」「女性にとっての歴史は、男の後ろをバケツを持ってついていったってことだけ」…その通り!! この人のいる意味は大きい。

いろいろ考えちゃうなあ。

ちなみに、映画との違い。
・ホロコーストを授業で取り上げたことで、ユダヤ人のポズナーの両親からクレームが入る。
・ポズナーのその後が幸せじゃない!
・それに関連して、ポズナーがアーウィンを恨んでる未来の場面がある。(これはちょっと唐突)

ヘクター先生の考えを完全に取り込んで、アーウィン先生に反発した(?)ポズナーが、社会にあまり適合できなかったっていうのは、切ないなあ。

ああ、ほかにも意味深なことはいっぱいあった。「目新しいことを言え」というアーウィン先生の教えと、結果的に「サルトルはゴルフが上手かった」と口から出まかせを言って面接の練習でウケてしまう生徒。まやかしが通ってしまった瞬間。

彼の合格理由もすごい。父親がかつてオックスフォード(ケンブリッジだったか)で用務員をしていた、用務員の息子が入学するなんてすごいじゃないか(身分社会を是正しているアピールになる)ってなことで、これは映画では合格を辞退することになってました。


ところで、舞台装置はすごくシンプルなんだけど、面白いのが床に敷いた紙。これをちぎって答案を書いたりするんです。最後にお葬式の比喩として使うのにも驚いた。


出演者について。松坂桃李はマジでスターさんだね。くらもちふさこの漫画に出てくるような、ちょいワルで思わせぶりなモテ男そのものでした。

主演はアーウィン先生ということらしい。中村倫生、お肌がきれいで男役さんみたい。ていうか、顔立ちだけで言うと麻路さきじゃん。

ポズナー役は太賀、って初めて見たけど、知り合いの社会になじめない男子に似てて、リアルに感じた(って個人的理由)。

神学志望の生徒の役に、『世迷言』で猿の役をやってた橋本敦。映画と違って、この人が理性的に場面を説明したりする。猿と全然違う~。可愛いのに声が太いのがツボ。ピアノもひいてました。

『非常の人』に出てた小柳友の兄、小柳心が体育会系の生徒。そっくりな体格と、ぬぼーっと感。

ヘクター先生は映画とは全然体型が違う浅野和之。偏屈ぶりが良かったです。

ドロシー先生の鷲尾真知子も、ちょっと浮いてる感じ、ひねった感じがきいてた。

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