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三谷版 桜の園(パルコ劇場 6/28 19:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

カーテンコールでキャスト全員が並んだとき、登場人物、たったこれだけだったっけ!? と思った。それだけ、いろんな人間のドラマを観た気がして。いやあ、深い深い。それぞれにちょっとずつ感情移入できるし、描かれていない部分もすんなり理解できるし、ずっと同じ舞台装置で、人が入れ替わり立ち替わりあらわれてしゃべるだけなのに、なんでこんなに深いんだろう。

…三谷がチェーホフに挑戦する、しかも「喜劇」として。ということで注目され、「喜劇になってないじゃん」とか「下品な笑いを無理に入れるのは冒涜」とか、いろんな意見があるようですが、私は全然詳しくないので、ただただ、会話が自然で、それぞれの人物の内面が深く描かれていることが面白かったです。

ただ、これはきっと、チェーホフの元の戯曲がいいんだろうな、と。なぜなら、「かもめ」を映像で観たときも、同じように思ったから(笑)

三谷演出は、どうなんだろうなあ。時折入る「くすくす」っと笑いたくなるような箇所は、最終的にしんみりする結末から、浮いているとは思わなかった。笑えるけど最後はしんみりって、今時の演劇では(って何が今時かわからないけど)、よくあるノリ、むしろ王道なのでは。

全て子ども部屋を舞台にしているのは、今回の新しい演出だそうで。三谷の好きなシチュエーションコメディの手法ではあるよね。桜の園そのものが子ども部屋であり、ラネフスカヤや兄が、子どもじみていることの象徴でもあり、みんなが素に戻る場でもある、という意味もあるのかな。窓から見える木や光がきれいでした。生ピアノも効果的。

ラネフスカヤ夫人は浅丘ルリ子。生で観るのは初めて。身のこなしが美しい! 美とは、若さではないんだなあ。もうね、スターさんだからね、オーラがすごいですよ。ちょびっと棒読みだけど、それすらも「高貴」の証。

兄の藤木孝も高貴だからねえ。この二人が兄妹って、本当にそうとしか思えない。

商人ロパーヒン役の人(市川しんぺー)、変声で面白い。すごく上手い。ただ、あれだけラネフスカヤ夫人を尊敬していたのに、最後の変わりようが良くわからないな。

ワーリャ役の神野三鈴。小曽根真の妻だよね。じつは私、小曽根さんがANAでやってる番組が好きで、それ聞きたさに、遠征時にANAばかり利用してたんですよ、なんで終わっちゃったんですかね、ANAさん。そいでもって青樹泉との対談で小曽根さんが妻のことを「尊敬している」と言ってて、妻のことをそう言うなんてすごいなあ、素敵だなあと思ってて、、、、って、そんな話はどうでもいいですね、はい。やっと生で観れました神野さん。すごく緩急自在な芝居をする、上手い! 大竹しのぶに声が似ている。「欲望という名の電車」の妹役もやってなかったっけ? こういう、大人しめなんだけど抑圧を秘めてるという役が合うのかな。声といい、演技といい、ちょっと娘役っぽくもあって、架空度が高いのも面白い。

大学生役は、本来はもっとインテリっぽい人がやるんじゃないかな、と思ってたけど、新しい思想にかぶれてて、童貞で、というおかしみが、藤井隆ならではのハイテンションでわかりやすかったかも。

青木さやかは予想より舞台の声が出来てた。笑いもとってた。でも、この作品の雰囲気には馴染んでいなかった。

ラネフスカヤ夫人の娘は大和田美帆。もっと高貴さが欲しかった。高貴な娘が、最後庶民になろうとするってのは、重要な点だし。この舞台全般、「この人は貴族でこの人は庶民」というのが、ぱっと見わかりにくい。衣装の問題じゃないよ。その点、神野さんは、貴族として育っているけどじつは平民、という複雑なところがよく出ていたな。

フィールス役のおじいさん(江幡高志)がすごい。間の取り方が絶妙。最後に彼が死ぬ(んだよね?)ときの、「この未熟者めが」が効いている。

いろんな人物に感情移入して、ラネフスカヤ夫人のだめんずぶりに唖然としつつも共感したり、娘に「ママの人生これからよ」と言われても、「お前は若いからそんなこと言えるんじゃーー」と内心むっとしたり、でも、娘が大学生に感化されて貴族の生き方を捨てるのも共感できるし、お互い好きなのに立場が違ってしまって告白できないロパーヒンとワーリャの葛藤…どれもこれもに共感していて、自分のこれからの人生はどうなるんだろう、自分もこうして桜の園を去る日が来るんだろうな…

というところにフィールスの「この未熟者めが」という台詞がラストですよ。うーん、先達にダメ押しされてしまった。

ほかのバージョンの桜の園も観たいなあ。チェーホフのほかの作品も観たいなあ。ロシア文学全般気になる。(私が知っているのは、『オネーギン』と『カラマゾフの兄弟』と『復活』だけです(笑)。)詳しい方、お薦めを教えてください。

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