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私的:2011年ファントムのちょっとしたほころび [観劇メモ]

エリックがクリスティーヌに顔を見せて拒絶されたあと、絶叫して苦悩する。そして母親のことを歌いながら、銀橋を渡る。

ここで私は、「あ、エリック、立ち直った」と感じる。

だって蘭とむエリックは強くてかっこいい。毒を飲まされたクリスティーヌをさらうのも、悪漢(=カルロッタ)から救ってくれるヒーローに見える。むしろ包容力すら感じてしまう。男役芸のなさる技。

だから、あれ? なんで地上に出ちゃったの? なんでだっけ…。と疑問に感じてしまう。あ、そうだ、ここは拒絶されたエリックがいかれちゃった場面のはずなのだった。と頭で補う必要があるほど。

そのあと、撃たれて傷ついた途端に弱気になってキャリエールに「地下に連れ戻して」と言ったり、かといってシャンドンが出て来たら「クリスティーヌは渡さない!」と言い張ったり、やっぱりエリックって、人格形成に問題がある子ども以外の何者でもないよねえ。

でも蘭寿さんはかっこいい大人の男性に見えてしまって、2幕はいろいろ補いながら観てしまうのだ…。

この『ファントム』を宝塚でやるって、難しいなあ。

キャリエールにも「?」と思う瞬間がある。例の銀橋のクライマックス、「音楽で固く結ばれてきた」。? そんなにこの二人、音楽の話とか親しげにしてたっけ…? と。

壮キャリエールは、冒頭で「このオペラ座には幽霊がいるんですよ」という言い方がとても良くて、「ああ、この人は自分の罪を幽霊と呼んでいるんだな」と、彼の苦しみがずしっと響いてくる。

でもその苦しみが強すぎて、エリックにも距離を置いて接してきたんだろうな、と感じてしまうのだ。

これは大沢たかおファントムで観た篠井キャリエールに近いかも。自分を律して、罪を認めたくなくて、いつかエリックを殺さなければいけないことを昔っから覚悟しているような。でも大沢ファントムでは、あの銀橋の歌はなかった(歌はあったと思うけど、違うものだし、もっと短かったような)。

壮さんは同期の父親役ということで、より落ち着いた役作りにしようとしたのかなあ。。。母親が無条件の愛を与える存在なら、社会性を担当する父親としてああいう態度になるのはすごく自然だと思う。エリックを殺した後の動作も、その役作りなら正解だと思う。でもあの銀橋の歌の歌詞とちょっと合ってないように感じてしまう。

キャリエールを「ひどい男だ」と思う人も多いんだろう。設定的に。そこにどう説得力を持たせるか。キャリエールって、難しい役だよな…。

(ちなみに、ビストロで、クリスティーヌの歌を聞いた後の壮キャリエールの顔がツボ。本当にベラドーヴァを愛していたんだなあって思う。)
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