SSブログ

図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの(東京芸術劇場シアターイースト 5/26 13:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

イキウメの図書館的人生は短編をつないだシリーズ。
(図書館と直接は関係ない)
今回は、完全に独立した短編ではなく、
登場人物が少しずつ重なっている3つの物語。

「襲ってくるもの」というタイトルに一番ぴったりなのは、2つめの話。

意志でも感情でもない「衝動」に突き動かされて、
交通事故を起こしてしまった青年。
大窪人衛さんのいっちゃってる感がすごくいかされている。
そこまでの衝動は、自分的にはそれほどは共感できないなあ、
統合失調症の症状のようにも見える…
でも、彼が言う、自分のちょっとした行動がめぐりめぐって世界を変えてるかも、
というセカイ系の妄想は、わかるなあ。
横断歩道でずーっと手振ってる人がいて、この人もセカイ系なんだろうなあ。

1つめは思い出が襲ってくる話。
認知症になった脳科学者が、
自分の意識を機械に移植して、
寄木細工の箱になっちゃうんだけど、
あまりに人間味がないので、家族がコーヒーの香りをかがせたら、
プルーストのあれみたいに、過去の思い出が襲ってきて、つらすぎる、という。
すごく切なかった。
安井順平は我が家では大人気なんだけど(『地下室の手記』が最高)、
機械の声から、コーヒーの香りを嗅いでからの変化が、すごい上手くて鳥肌もの。

イキウメはつねにSFっぽい設定なんだけど、
結果として、人間らしさとは何かとか、そういうことを対比させているんだよね。

3つめは「優しさ」という欺瞞に襲われている話。
よくある、他人のためと言いながらじつは自分の自己満足のために
他人を変えさせようとする人と、それにあらがう人の話。
優しさを妹に押し付けようとする兄が、
タップダンスが趣味なんだけど、最後あやつり人形みたいに踊っているのも意味深。
兄は浜田信也。この人の機械っぽさ(やや棒、民主党の前原に似てる 笑)が
イキウメのSFっぽさにかなり寄与してる気がする。

セットが、入れ子になったような箱で、これは1つめの話の比喩なのか。
箱の境目から人が出たり入ったりして、通路のようになったりするのも面白い。
つらい思い出がよみがえるとき、その奥から手前に出てきたり、
そこが窓になったり。

1つめのつらい思い出=弟の彼女をとっちゃった。
その弟が2つめの主人公。
弟の勤務先の友達は、昔ストーカーだった。
その、ストーキングの話が3つめ。
ストーキングされる被害者の友人が、1つめの話の「弟の彼女」で、寄木細工の職人。
1つめの話の主人公が入っている寄木細工はこの彼女の作かもしれない。
…この人はあの話の…?? と考えながら観るのが楽しい。

でも肝心な場面(浮気とか警察につかまるとか)は描かない。
すごく自然で、いろんなことを語ってるんだけど、
すべてを明らかにしちゃわないのも、また上手い。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。