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君が人生の時(新国立劇場 6/20 12:30) [観劇メモ(ヅカ以外)]

主人公が、『ブエノスアイレスの風』のニコラスみたいだな、と思った。

って、通じないだろうなあ~

何か過去があって、自分からは全然動かないんだけど、
なんか包容力がある、という。

酒場でずっと座って、子分にこまごましたものを買いにいかせて、
じつは足が悪くて、昔はよく働いたけど今は無職?? 
案外金持ちみたいで、態度悪いけど本当はすごくいい人で、義侠心があって、
お金はどこから出てるの??

こりゃ、男役がやる役だよ。でないと成り立たないよ。
何者か全くわからないし、ほとんど動かないのに、主役だなんて。

っていうところを、ジャニーズのスター性でなんとかしてた、かな? 坂本。

話は、1939年の戦争がはじまりそうな鬱屈したサンフランシスコの、
酒場に、いろんな人がやってきて、いろんなことを言ったり、したりする。
それだけ。

コメディアンとして使ってください、と言うくせに全然面白くないヤツとか。
でも彼はタップが上手くて、それで雇ってもらえた。

そんなふうに、ちょっとダメな人にも、なんかしらいいところがある。

ずっと座っていて、カタコトで同じことしか言わない、ユダヤ人かな?が、
ふと、自分の故郷のことを話し出したり。
ゲームばっかりしてる若者は、アッシリア人だという。
バーのマスターはイタリア人。

いろーんな人がいて、それでいいんだなー。
と思うと、ウルっとする。

タップダンス、黒人ピアニストの伴奏、ユダヤ人のハーモニカ、
が突然融合して超かっこいい音楽になるところで、ゾクゾクした。

いろーんな人がいるから、面白いんじゃん。

だけど、それが許せない人は、「治安を守る」名目で取り締まろうとする。

売春婦を追い出したい警察の親分? が
わかりやすい悪役。

主人公坂本の子分が橋本淳くんで、
橋本くんが好きな売春婦がすみ花ちゃんで、
すみ花ちゃんがこの警察の親分にひどい目にあいそうなところを…

というのが、一応のクライマックス。

悪役が単純な悪役なのは物足りないけど、
芝居としてカタルシスを得るためには、そうせざるを得なかったんだろう。

かわりに、下っ端のおまわりさんがそのあたりの葛藤をしゃべってくれる。
(前にアラカルトに出てた中山祐一朗。)
「ただ毎日平凡に幸せに生きたいだけなのに、
なんでこんなにイザコザが起きるんだ?
みんないかれてるよ!」と。

彼には、本質は見えていない。
「平凡な幸せ」以上を求めてしまう誰か、
もしくは「平凡な幸せ」を認めない仕組み、があるからじゃん!
売春婦を取り締まるばっかりで、
売春婦本人の幸せについて真剣に考えないような世の中が良くないんだよ!

酒場の外では、ストライキが起きたりしている。
そういう意味では、きわめて今の時局にあった話なわけよ。

酒場の中では、いろんなテーブルで、次々話が起きているから、
同時並行していて、それがちょっとした効果をうんでいる。
富裕層を批判する話になってるときに、
たまたま、興味本位でやってきた上流階級の人が座ってたり。

木場勝己が伝説のガンマン風に登場するんだけど、
じつはただのホラ吹き。
でもすごい迫力。

最後、殺人をおかそうとした自分自身に呆然とした主人公は、
街を出て行く。
これまで、何もしないことに徹底していたけど、
突然、自分の中に激しいものが生まれたことに、驚いたのかな。
何か、新しいことが生まれそうだと思ったのかな。

彼はどこからお金を得ていたんだろう。
株かな? と思ったけど、
一緒に観た人が、武器商人かも? と言っていた。

だとしたら、それを辞めることにしたのかもしれないな。
だといいな。

サローヤンの名前は知っていたけど、観たのははじめて。
地味だけどしみじみした。

坂本と橋本くんが賭けた馬の名前が「プレシャスタイム」。
芝居のタイトルは「君が人生の時」。

大ホラ吹きのおじいさんが、
しきりに、「○○年にこういうことがあって俺はこんなことをしたんだ」と言う。
ホラだってわかってるんだけど、
坂本は、本気で信じてあげていた。
そこにもウルっとした。

そして彼が最後に、殺人をやらかして、
「俺が人を殺したのは、1939年の10月だったかな…」
と、今、現在のことを言う。

タイトルの通り、「時」も重要なテーマなんだね、これ。

一瞬一瞬が、一人一人が、大事で、取り戻せない。

なんだかしみじみする芝居でした。


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