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ホテル マジェスティック 戦場カメラマン澤田教一 その愛と人生(新国立劇場 3/16 17:30) [観劇メモ(ヅカ以外)]

あまり期待していませんでしたが、ごーごー泣かされて帰ってきました。

演劇的に新しいことをしているとか、そういうことはございません。どちらかというと、すごくよくできたテレビドラマのようでもあります。特に最後の死ぬくだりは、史実とはあえて違えて、泣かせる仕掛けにはなっています。

でも、ちゃんと考えて作ってあることに、とても好感が持てました。

有名な「安全への逃避」という、ピュリッツァー賞をとった、川を渡って逃げる親子の写真。澤田があれを撮るところがクライマックスなのかと思っていたら、全然そうではなくて、あれを撮ったあとの澤田教一の迷いとか、苦しみとかがメインでした。

戦場カメラマンは何のために悲惨な写真を撮影するのか。生活のため。名誉のため。一発あてて有名になりたいため。いやいや、正義のため。戦争を終わらせるため。それとも、悲惨な写真を見たいという読者の要望に応えるため。

報道写真というのは、悲惨なものを見たいという人間の欲望と、平和のために真実を知らしめたいという正義との、両面がどうしてもあって、それは避けられないことです。

澤田教一の悩みを軸に、登場人物それぞれが、いろいろな立場を象徴していました。戦争中毒のようになってしまう澤田、そんなカメラマンをたくさん見てきたしたたかな上司、商社が武器を売るのは生活のためなんだからしょうがないじゃんと明言する商社マン、、、

そこには、アメリカという重要な要素もあります。

アメリカを見返したいという澤田、アメリカ人になりたくて永住権を得るためにアメリカ軍で働いている青年、アメリカを憎んでいる沖縄出身の女性(これがリカちゃん)、、、この青年とリカちゃんのやりとりが澤田に火をつけて、やりあう場面は、ある意味クライマックスかも。

ベトナム戦争があった頃は、アメリカの影がもっと明確だったんだなあ。今も本当はそれがあるけど、みんな慣れきってしまっているんだよね。「悲惨な状況に慣れてしまってはいけない」と澤田のセリフにあったけど、本当にそうだなあ。

一番泣かされたのは、澤田の父親が第二次大戦で中国に行って、帰ってきたものの飲んだくれになってしまったという設定。それについて、ラストに澤田がする長い独白に、会場は嗚咽の渦。史実とは違うようですが、素晴らしい設定だと思いました。

戦争はいけないことだ。という当たり前のことが、子供のころはよくわからなかったけど、大人になってしみじみわかるようになりました。それは、兵隊に行ってのんだくれになってしまうような、弱くて、情けないけど、良心を捨てきれない人間の気持ちを、想像できる引き出しができたから。こういうとき、年をとるっていいことだなあ、とつくづく思います。

初舞台で初主演という玉木ん(←友人とこう呼んでおります 笑。私、玉木んの顔、大好きなんですよねー。ヅカファンになりたての、男性すべてがかっこわるく見えた頃、唯一素敵だと思った俳優さんでした。)芝居は大根だと思っていたけど、なかなかどうして、立派でした。津軽弁の朴訥さが助けになっていたのかもしれないけど、熱演だったし、主役オーラが素晴らしかったです。あんな夫、ほしいわー。次も舞台に出てほしいです。

リカちゃんは沖縄出身のカメラマンで、反米思想を語る重要な役割。かなりKYで嫌がられている存在だけど、こういう女性がこの時代頑張っていたんだろうなあという説得力があります。架空の人物だけど、彼女のその後がすごく知りたい。

カメラマンの総元締めみたいな支局長がべっしー。うさんくさくて、口が悪くて、オヤジで、タバコくさそうで、でもいろんなことを見てきて、腹におさめてきた、大きな人物。サイゴンという町の雰囲気をこの人が作り出していました。

澤田の妻に酒井美紀。これがもう、トップ娘役の風情。11歳も年上という設定もあるんだけど、肝っ玉で、でも可憐で、いつでも笑顔でみんなに優しくできる強さがある。かわいいのにすごい包容力。これぞトップ娘役だ! あ、そうか、彩乃かなみに似てるんだ。なるほど。しかも方言だから、涙をこらえている場面なんかで、Me and My Girlのサリーのナンバー「ちょっとした知恵、悲しみ受け流す知恵アゴで受けとめてニヤリとしてから スマイル~」と幻聴が聞こえてきそうでした。

商社マンは劇団エグザイルの人。ちょっと柚香光に似てる。下手うまという感じで、笑いをとってました。この人が重くならないところが、重い話の中でバランスがよかったのかも。グリーンカードがほしい青年は、ちょっとキムに似ててかわいい。とてもいい声でした。

こうして書いてみると、けっこう少ないのね、メインキャスト。だけど、彼らが根城のホテルマジェスティックのロビーで繰り広げる、喧嘩なり、雑談なり、だるまさんが転んだ(これが笑える)が、複雑かつ濃厚な関係性を作り出していて、ああ、だからタイトルは「ホテル マジェスティック」なんだと納得。


…原田諒が「ロバート・キャパ」で読売演劇大賞をとったそうですが、信じられません。私の観劇歴の中で最もひどい作品だと思いました。戦場カメラマンというだけで、いろんな要素があるのに、何も考えてない、言いたいこともない、人物が誰ひとり描かれていない、ただ起きたことを並べているだけ、起承転結すらない(植田紳爾とかのほうが、やりたいことがあるだけ全然マシ)。原田諒と、彼に賞を与えた人に、「ホテル マジェスティック」を観てほしいです。(って選考委員の名前見たら、偉大な人たちばっかりやん…一体なぜ…)

脚本の樫田正剛、どこかで聞いたことがあると思ったら、「グッバイ・チャーリー」(2009年)の脚本家でした。このときも脚本がよかった印象があります。
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しんのすけ

キャパに関しては、私は最近のバウ作品の中では一番の秀作と思いましたよ。
まず切り取った部分が簡潔で軽い分、爽やかさがありました。深けりゃいいとは必ずしも思いません。そして評価を得たのは舞台演出も込みだと思います。

ただ事実の羅列に見えた舞台も、その羅列の切り取り方や見せ方にメッセージがある。それはまた裏テーマのようにも感じました。
by しんのすけ (2013-03-17 21:52) 

竜眼

しんのすけ様、コメントありがとうございました。裏テーマですか! それは思いもしませんでした、SKY STAGEでやっているので録画して見てみますね、楽しみです。
「華やかなりし日々」の舞台装置の使い方はとても素敵でしたし、音楽の入り方がいつも上手ですよね。キャパにはその長所が感じられなかったのですが、、、、何はともあれ見てみます!
by 竜眼 (2013-03-19 23:40) 

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