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高泉淳子X篠井英介 怪女優・化け学講座 [観劇メモ(ヅカ以外)]

表参道スパイラルの地下にあるレストランCAYで行われた、高泉淳子さんのライブに行ってきました。
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/2012/05/live-cay-2012part-5-x.html

お目当てはゲストの篠井英介さん。すごーーーく楽しかったです。観劇してて、こんなに楽しいと思ったのは久しぶりかもしれない!(よっっぽど宝塚に倦んでいるんですな、私…)

お二人は、活躍し始めた頃から、かたや女形、かたや老若男女を演じるということで、「怪女優」などと同じ括りにされて、雑誌の見開きで左右に並んだりしていたそうです。お互い意識していて、今ではこうしてライブなどを一緒にやる仲。(しかも、こないだ篠井さんが出た『天守物語』の演出白井晃は高泉さんの夫なんじゃん)

まずは一曲歌ってから、対談。

お二人は今の演劇界では絶滅危惧種だ、という愚痴から。自分たちが育った演劇界(唐十郎とか、最近なら渡辺えりあたりまで)は、どっか違う世界へ行っちゃったりする世界観だったけど、最近の演劇はリアリズムで、四畳半でずっと黙ってたりする、つまり映像に近くなってるから、性別を超えちゃうような役者は使いにくいのだそうです。なるほどね、映像では性別は超えられないというのは、ヅカファンなら良くわかる話です。

高泉さんが唯一男役で出た映像作品は、『時効警察』。オダジョーが好きで、どうしても出たくて、でも、当初はオダジョーと接近できない役が来たので、台本の中から、最も接近できる(ヒソヒソ話の場面がある)おまわりさんの役をやりたいと申し出た。もちろん、オジサン役。オダジョーは撮影中、すごく優しかったが、自分はずっとオジサンの格好で、オジサン役として会話していたので、オダジョーはいまでもあれはオジサンだと思っているに違いない。(だれかー、オダギリさんに教えてあげてー)

高泉さんて、私は、ポンキッキーズの山田のぼる君しか見たことなかったんですが、トークは面白いし、歌は上手いし(役者さんだから発声はよくて当たり前なんだけど、見せ方がいい)で、まさにエンターテイナー!

次に、二人性別を入れ替えての芝居。

レストランでモジモジと会話をする、小さくてオドオドしたおじさんと、大きくて気取った女。会話の内容から、年は50ぐらい? 二人とも独身で…どうやら、お見合いらしい…、二人の気取りと、モジモジ感が可愛らしく、共通の話題から垣間見える世代のノリや、夢見る夢子ちゃんで結果独身になっているちょっとしたイタイタしさなんかが、面白い。これ、かなりのアドリブみたいで。自分たち用にささっとプロット作って、あとはアドリブでやっちゃう。すごいなあ。

最後はお歌。

篠井さんは、赤いドレスでけだるくシャンソン(知らない曲だったけど、いい曲だった!)。白いドレスではサティのJe te veuxでかわいく客席降り。最後は男性に戻って、キャバレー。

篠井さんのどこがすごいって、娘役のキメ顔をいくつも持ってるとこなんだな、と改めて思った。うっとり顔、来てよ顔、がいくつもあって、どれも美しいの! 歌いながら、それらの表情を次々と繰り出して、世界観を作っていくのが素晴らしい。ディナーショーやってほしいなあ〜。豪華衣装でさ〜。

高泉さんは、山田のぼる君役で、有名なモンパパ(これ、初演は戦前の宝塚なんですよ。白井鉄造作品)。黒いワンピースの少女の役で、なんていう曲なんだろう、「不幸!」って叫んでたけど、運命を享受しているような。。。「両親に捨てられてー、朝は新聞配達、昼はー、スタバでバイト、夜はぁ〜、和民!!」このセンスがね、すごいと思うんですよ。

それから、おばあちゃん役で「丘をこえーゆこうよー」という曲(有名すぎて曲名がわからない)。そして、大人の女性に戻って、何曲か。最後は、「マックザナイフ」の歌詞を変えて、二人でそれぞれの来歴を歌うような内容でした。

「私たち、選曲がだいぶ違うわね」と言いつつも、世界観は同じなんじゃないかな。女性がしっかりしていて、男は情けない、でもそんな男が好きな粋な女(シャンソンとかジャズが中心だから当然なんだけど)。

そして、キャバレーの歌詞に登場するエルシーという娼婦や、「不幸!」の曲が表しているように、刹那的に生きているように見えて、じつは一生懸命な女性たち。

「不幸!」の歌詞で「日々是好日」という言葉が出てきて、これを、次に出てきたおばあちゃんが説明していたんだけど、禅の言葉なのだそうですね。「日々是好日」は、毎日が楽しいといいな、という意味では全然なくて、どんなことがあってもその日その日が大切で、ただひたすらに生きていく、という意味なのだそうです。「丘をこえーゆこうよー」の歌詞がそれにつながっていて、ちょっと、いや、かなり泣けるんです。悲しいこと、つらいことを、耐えるのでもあきらめるんでもなく、無理に意味を見出すのでもなく、ただ、ありのままに受けとめる。。。

高泉さんがスタンダードジャズを歌ったCDを買って帰ったのですが、こちらもそういう世界観の歌詞に感じられて、素敵です。(訳詞であること自体、うれしい。西洋音楽で歌舞伎の題材をやることから始まった団体=宝塚に馴染んでいる身としては。)

自分のアイデンティティを大事にしながら、日々是好日で演劇界に生き残るお二人。すがすがしく、晴れ晴れとした気分になりました。これで4500円+ご飯代なんて、安すぎる!


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