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クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!(東京宝塚劇場 12/10 15:30) [観劇メモ]

はからずも、おやっさんとの和解の場面で泣いてしまった。そのうえ、職人さんたちのインタビューがさらに泣かせるもんだから(月映樹茉ちゃん、やっぱ芝居いいね〜)、幕間は真っ赤な目をしていたと思います、私。

植田景子の作品で、主人公である男役に感情移入できたのは、『オネーギン』についで二度目です。これって、すごいことです。だって、それ以前は、理想的でいい男すぎるか、すねすねアダルトチルドレンで男役としてどうなのと思ってしまうか、どっちかだったんだもの。

いやあ、植田景子に乾杯。(『アリスの恋人』でがっくり来てたので、かなり点が甘くなってるな、自分)

主人公が、元は職人さんってところがいいのかな。天才だと、観客からすると「ひとごと」になりがち(『LAST PARTY』とか)。しかも、「自立して自分の力を試したい」「いいものを貧しい人にも着てもらいたい」っていう出発点も理解できるし、「かといって完全な使い捨て商品は自分のポリシーに反する」っていうのも理解できる。その中間で、どちらの側からも批難されて、葛藤が単純な二元論ではないところが、いい。

アメリカに対する憧れがありつつ、それが自分たちをスポイルしている、っていう構造も、単純じゃなくていいし、今の私たちにも痛い。それを、「家電製品のCMに出れる」というエピソードと上手くリンクしていたりするのも、立体的。

主人公が、最初はものすごくカッコいい(カッコつけてる)のに、過去が明らかになってくるにつれて、だんだん弱い面が見えてきて、最後、おやっさんの前ではもう、ダメダメのよれよれになってるのも、その気持ちに寄り添える。

ユウヒさんあってのこの作品だよね。カッコいいのに、ダメダメ。それが乖離してない。しかも、ダメダメでもカッコいい。おやっさんの前で猫背になってる姿もカッコいいし、酒場で、同僚が去って行く弁を黙って聞いているときの、組んだ足と、だらんとした手も、カッコいい。はぁ〜。ユウヒよ、ナイスリーナイスリーで滑りまくっていた君が、今こうして客席中をメロメロにするなんて、私は思いもしなかったよ。

あと、植田景子よ、その手があったのか! と膝を打ったのが、すみ花の使い方。そうかそうか、ヒロインってのを無理に造らなくてもいいんだ。主人公の心を癒すペット的存在でも、アリなんだ、と。最後にすみ花が、自分から「つつつ」と寄って行く様子は、「私も、ああいう存在になら、なれるかも」と思わせてくれる(誰にとってのかっていうと、ユウヒにとって。笑。男役に対する夢ってのはそういうものなんだってば。)

組子それぞれに役があるのもよかった。ひとつひとつの出番は少ないけれども。

ショーは、藤井大介らしくめまぐるしくて楽しかった。冒頭の紫スーツは振付けがかっこよかったし、中詰めに至るまでのスタンダードジャズの歌い継ぎも楽しいし。

けど、ユウヒに黄色とかピンクはないだろー、と。もうちょっと、クールでスタイリッシュな感じを期待してたんだけど。赤いバラのところは、別にユヒテルでは萌えなかったな〜、個人的には。

一番好きな場面は、眠ってしまったすみ花の傍らに、紫のバラを置くところ。歌ってもいない、踊ってもいない、装置もたいしたものはない、何もしていない、ただひたすらその場でタメているユウヒ。それで、場を持たせられる、これがスターさんでしょう! 男役トップってもんでしょう! 私はこういう熟練の技が見たいんです!

つまり、これが「ナポリ仕立て」ってこと? 仕立て屋職人ユウヒが最後まで貫いたポリシー、縫った人の心が、着る人に伝わるような仕事。宝塚も、本来そうあるべきじゃん。

ちょっと顔がきれいだからとか、手足が長いからとか、そういうことで簡単にスターを作って、バタバタと主演させて、人気もないのに上げていく。。。そんなんでいいのかい? 大体、今の一ヶ月公演体制や、大劇場と東京の間が短くなったのも、作品や生徒の質を下げてるよね? 『アリスの恋人』だって、もっと時間あったらいいものになったかもよ? 再演再演で、利益は上がってるの? そうでもないよね? 

原点にかえろう。「最高の男(役)の仕立て方」それは、ナポリ仕立てってことさ!
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