SSブログ

アリスの恋人(日本青年館 12/7 18:30) [観劇メモ]

(改訂しました)

うー、全くついていけなかった。

まず、誰の物語なのかがはっきりしない。アリス? みりお青年? ワンダーランドそのもの? 焦点がさだまらない。もたくたしているうちに、みりお青年の夢の話らしいことがほのめかされるが、ネタバレを避けるあまり、感情に訴える場面がない。

で、一幕最後に「これはお前の夢の中なんだよ!」と重要なセリフがある。なのに、演出が盛り上がらない。二幕最初に、夢の中にいる理由が明らかになるが、すべて説明台詞で、その上みりお青年本人は「へ〜」とひとごとで、自分のことなのに感情が動かない(演出としてね)←ここ致命的。

ファンタジーという、ちょっとした破綻で世界観が壊れるジャンル。なんとか成立させるのに大切なのは、主人公の感情の流れでしょう。

例えば、ラストで再会した二人。喜びのあまり抱き合うのはわかるけど、現実では初対面なんだから、そのあと戸惑いがあるはずでは? なぜ「愛してる」なんて明快に言えるのか? 

「人間」が描かれてなくて、記号があらかじめ決められた動作をしているだけのように見える。『メイちゃんの執事』で感じたのと似たような残念さ。

多分…私がゲーマーじゃないからなのかも。と、ふと思った。データベース消費についていけてないだけなのかも。面白そうなキャラクターがいっぱいいて、それがわやくちゃ動いていて、記号通りのストーリーを、適宜選んで先に進んでいく。。。そういう見方なら、なんら問題なく楽しめるのかも。

あと、アリスがかわいくない………。「何かほかの方法があるかもしれないじゃないですか!(てへ)」…うーん、これこそ『めぐり会いは再び』で言う、むかつく「ドジっ子」では? 愛希れいかの声が無理してる感じなのもつらかった。(キンキン声だから社会人には見えず、落ち着いたみりおのほうが年下というのが、どうしても納得いかない。)転向後しばらくはバウ二番手などで慣らすべきでは。スタイルが良すぎるのも、相手を選びそう。

小柳奈穂子は何かすごい鉱脈を堀り当てたのかと思ったのになあ。『めぐり会い』は一時間で原作つきだったから良かったのかなあ。

良かったところ。
・衣装。特に赤の女王みたいなロリロリしたのは宝塚では珍しい。
・音楽。赤の女王の曲が特に良かった。
・マギー大活躍! マギーに損得なしの思い人がいたことってあったっけ。しかもロリコン!(あ、スカピンがあったか。でもあれは、十把一絡げだったからな)
・ガチャさん大活躍。いいなあ、あのヒゲ。マントにティーカップ、笑った。
・ゆりあちゃんの黒い役、ぐふふ。
・紫門ゆりやは発声のできてない人と思ってたけど、笑いいっぱい取ってて見直した。地味っ子(咲妃みゆ)とのやりとりはときめいた。

月組期待のたまきち、ちなつちゃん、ダンサーたかちくんが、かっこいい役ではなかったのは残念。まあこういう役にも得るところはあるんだろう…そう願いたい。

みんなして小芝居をいろいろしていたから、盛り上がってはいるんだろうなあ。荷物を運ぶトランプ男(輝月ゆうまと優ひかる?)のアドリブが面白かった。

かように、登場人物たちは、原作を上手く換骨奪胎して、魅力的になりそうなのになあ。

ついていけないことが、すごーく、さみしいです。


正直、幕間に帰ろうかと思ったのは、宝塚では初めてだった。。。。

今回観ながらすごく気になったのは、前述の通り、「主人公の感情の流れ」が無いことだった。だけど、よく考えたらそんな作品はいーっぱいあるんだよね(笑)。それを、例えば『仮面の男』(東京版)のように、宝塚的演出、ナンバーの面白さ、場面転換等でカバーしているものなんだ、宝塚ってえものは。『アリスの恋人』には、それもなかった。例えば、マンホールに落ちるまで、もっと加速をつけて進めるべきなのに、ぐだぐだしすぎている。(『仮面の男』は感情の流れの無さ加減が尋常じゃないので、例としては適切じゃないかもしれないけど)

でも、さらによく考えたら、「主人公の感情の流れ」もないし、宝塚的演出の面白さもない作品ってのも、よく考えたらけっこうあるかもしれない(おっとー、正直すぎるー)。中村Aの『あの日見た夢に』とか、そんな感じだった気がする(悪印象もないけど、とにかく印象に残っていない)。でも、それすらも、コムまーのスターオーラで、なんとなく「うん、宝塚観たぞ」って気になったもんですよ。

ああぁ、なんと、『アリスの恋人』には、スターオーラも無かったんだ……。「スターさん出ました!」感を感じたのはマギーだけ。みりおはもっとできると思うんだけども、主人公として機能してないから、スターオーラを発揮できなかったんだろう(ということにしておきたい)。ヒロインは反感を誘うドジっ子キャラで、演者の娘役技能もいまいち(個人的には顔も好みではない)。

小柳タンのヒット作(だよね?一部に人気)『シルバーローズクロニクル』は、設定に破たんがあったし、宝塚的演出の面白さもなかったけど、主人公エリオット(ユミコ)の成長物語としてちゃんとした感情の流れがあったし、なんたって、ユミコ、さゆさゆ(ヴァンパイアには見えなかったけど)、テル、キタ、ミナコ、キング(キングをここに入れますか、入れますよ)とスターさん出てます感が満載だったものよ。

それに、主人公にもヒロインにも感情移入できないと、キスシーンが、上手さ以前の問題で、寒〜くなってしまって。ラブロマンスが楽しくないなんて、宝塚を観る意味ないよね。。。

うーむ。東京でやる公演は今までほぼ全て観てきたけど、ここまで自分の好みとかけ離れてくると、もうそんな無理して観ることないような気がしてきたなあ。

さみしいーーー!

nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 4

カッチコ

お気持ちは物凄く分かります。
いや作品は見てないんですけどね・・・。。。
追記の部分に物凄く納得です。

こういう完全なファンタジーって上手い人がやらないとあちゃーってなってしまいがちですものね。

シルバーローズクロニクル、ゆみこさんの作品で一番と言っていいくらい好きな作品なんですー!
今思い返してみると、ゆみこさんのエリオットが好きだったんですよね。ナンバーもいいのがあったし。
こういう作品って演者さんの力量しだいで変わってしまうものなんですね・・・。

みりおちゃんのことは結構好きなんですが、何だかずーっと新人公演に出ているイメージで、中々大人の男役さんのイメージがつかないんですよね><
華やかなルックスで好きなんですけど、まだスターオーラは私には感じることが出来ません~。オーラのレーダーが未熟なのかもしれませんが・・・。

アリスの恋人、マギーが大活躍なら観たいですー!
マギーがトップさんになるなら月組に通いまくるのに・・・・。



by カッチコ (2011-12-09 04:14) 

福童

小柳奈穂子は『ゼンダ城の虜』の新公の演出が中々素敵でそれ以来注目してました。
『SLAPSTICK』『NAKED CITY』『シルバー・ローズ・クロニクル』とヒットを飛ばしてくれて(『二人の貴公子』はイマイチだったけど・・・・)期待通りの若手作家だと益々期待してたんですが・・・・『アリスの恋人』がイマイチだったというのは意外です。
実は私も観てないんですが、なぜ観なかったかというと明日海りおとファンタジーっていうのがどうもミスマッチな気がして・・・・
明日海くんは研1で『なみだ橋えがお橋』で文七元結の文七を達者にこなしたのを視て驚き、以来、期待し続けてきましたがなんだかなぁ~
カッチコさんが仰るように、宝塚の男役スターとしてのオーラは出ない人なのかも知れませんね。
真面目で謙虚で、スターとしての驕りが感じられないところが欠点なのかなぁ。『ホフマン物語』のホフマンを観た時に「この人に女遍歴するような役は無理」と感じて以来、少~し魅力が褪せてきたような・・・・
ファンの方には怒られるかも知れませんが、娘役としてきちんと育ててたら遥くらら以来の大型娘役トップになったのかもなぁ~と、ちょっと残念です。
by 福童 (2011-12-10 22:35) 

竜眼

カッチコさま、コメントありがとうございます!
私も、マギーがトップなら月組通いますわ。
荒唐無稽なお話こそ、上手くないとダメですよね。
映画でも漫画でも。
みりおは今回、なんと高校生なのだそーです。落ち着いてるから、
学生といってもせいぜい大学生だと思ってた…
そろそろ大人の役でヒットととばしてほしいです。

by 竜眼 (2011-12-11 17:43) 

竜眼

福童さま、
>明日海りおとファンタジーっていうのがどうもミスマッチ
今回の元凶は、そこかもしれません!
そのミスマッチをなんとかしようとして、
ツンデレと称して、あまり感情を表に出さないキャラにしたのも、
主人公が機能しなかった原因かも。
娘役だったら、さぞきれいだったでしょうね〜〜

by 竜眼 (2011-12-11 17:46) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。