SSブログ

ソルフェリーノの夜明け(東京宝塚劇場 4/4 16:00) [観劇メモ]

起承転結があった! ちゃんとストーリーになってた! テーマがあった! それだけでもベルばらよりマシじゃん! 

……なんとも低レベルな比較だ(笑)。でも私にとってはこの「話としてのまとまり」が一番大事なんです。

ストーリーは、ごくごく単純。主人公の「負傷兵の治療は、どっちの軍かに関係なく、行うべきだ」という主張が通るかどうか。日数にしたらほんの数日? 数週間? かたくなだったヒロインがそれに賛同するように変化し、最大のクライマックスは敵軍の将軍がそれを認める。それだけです。それ以外、何もないです。

テーマは戦争反対(だよね?)、それが無理ならせめて対症療法的になんとかしよう、という人道的なもの。観客の中で反対する人はまずいない。

つまりは、題材自体がシンプルで、とってもハードル低いってことだ。

それだけに、何の深みもないんだよねえ。ストーリー以外に、何の肉付けもない。『Romance de Paris』の銀橋での、軍隊は要るか要らないかの緊迫した歌に比べたら、なんて平面的な「戦争反対
…。

登場人物も、典型的な「捕虜」「部下をかばって死ぬ上司」「少年兵」「酔っ払いだが実は心に傷を負っている」「エリートだが野戦病院にやってきた医者」…彼らはみな記号にすぎなくて、キャラクターの背景とか考える余地がない。当然、萌える余地もない。

場面についても、こうすれば感動するだろ! みたいなパターンでできてる。よく、人が死ぬ場面でぜったい泣く、というタイプの人がいるけど、そういう感じで、「和解してアベマリア歌えば感動!」とか、「少年兵がいじめられればそれで泣ける!」とか、泣かせパターン。

でも、それを植田芝居の大見得切る手法で展開すると、意外に悪くなかったりして。

特に最後、敵軍の将軍が「敬礼!」という一言だけで主人公の主張を認め、そのあと一瞬の間、空白があり、突如「そるーふぇりーのー」と主題歌が入る、主人公が赤十字の旗振って花道を去って、幕! うわー、なんだこれ、この大見得! 鳥肌立ちそうになっちゃったよ、不覚にも…。(ハマコとミズの大見得芝居のおかげというのもある)

赤十字の話をなんで植爺がやるのかと思ってたけど、けっこう「命は尊い!」って主張は「ヨヨヨ…」っていう泣きにつながって、植田歌舞伎に合うのかも?

植爺の著書によると、終戦時に中学生だった植田少年は、焼け野原に心をいため、タカラヅカの豪華絢爛さに救われたとある。だから言いたいことがはっきりしてるんだね、この話。(ちなみに、プロローグが夢夢しいのは、植田少年が終戦後見たタカラヅカの美しさ=この作品で言いたいこと、なんだと思う)

ベルばらは、難しすぎたんじゃないかな。戦争体験のようなモチベーションがないし、いろんな人がいて、いろんな立場の苦悩があって、複雑じゃん。あんなの無理無理。大見得切って、パターン通りに感動させるには、どうしても言いたいテーマ(しかも誰にでも賛同してもらえるもの)と、単純で誰にでも一目でわかるストーリーと、一人だけの主人公と、とにかくシンプルな題材でなきゃダメだったんだよ。なるほどね〜。

そういえば、シャングリラもただの「記号」なんだよなー。でも「萌え」はあるね。
・シャングリラは萌えはあるけど見得はない。
・ソルフェリーノは見得はあるけど萌えはない。
どっちも全然深くない。どっちが楽しいかと聞かれたら…うーん(笑)

::::::::本家はコチラです→a posteriori takarazuka:::::::

ショーはまたあとで
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 2

kandenchi

こんにちは。いつも楽しく拝読させていただいております。
ソルフェリーノの夜明け…プロローグは完全に蛇足だろうと思っていたのですがあれは本作品の核だったのですね。
ただ、私にはあの華々しいプロローグに違和感を感じずにはいられませんでした。植田氏は外部のインタビューで「今回は宝塚らしい夢々しさから一度脱却し、戦争の悲惨さを訴えたい」と言ってたのに…作品はいつもよりコテコテの宝塚でした。
私は恐ろしくなりました。植田氏は確かに「宝塚は裸になって」デュナンに近づきたいと言っていたのに、出来上がったのは宝塚様式の型にはめられた台詞、場面転換の数々。こんな作品を作ってしまう人間が宝塚の舵取りを任されているのかと思うとぞっとします。誰よりも宝塚美に毒されているのは植田氏自身であり、しかもそれに気づいていないとは・・・。
今後宝塚が演劇の一派を名乗り続けたいのであれば、演者ではなく製作側の新陳代謝が必要不可欠であると強く感じました。
長文失礼しました。これからも更新楽しみにしています。
by kandenchi (2010-04-07 03:05) 

竜眼

kandenchiさま、コメントありがとうございます!
そうでした、すっかり忘れていましたが、
「裸になって」とか言ってたんでした、あの人…
全っっ然裸になってなかったですね。
植田芝居の枠に「戦争反対」入れただけでした。うーん。。。
あれで「脱却」したつもりだとしたら、わかってなさすぎですね。
プロローグも、著書読んでたから許容できましたが、
読んでなかったら「はぁ!??」だったと思います。トホホ。
またいろいろご指摘ご感想お聞かせください〜
by 竜眼 (2010-04-07 22:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。